最終更新日:2026年10月8日(9月14日の通知と事業所調査の結果を反映して全面改訂)
「個人事業主でも社会保険に入れる」「法人化しなくても社保に切り替えられる」——こうしたサービスは怪しいのか、違法なのか。2026年は、この問いに対して国が2回ルールをはっきりさせ、実際に1万人以上が資格を失った年になりました。
この記事では、厚生労働省の通達・通知と事業所調査の原文だけをもとに、何が変わったのか、加入前に何を確かめればいいのかを整理します。特定のサービスが違法かどうかは判断しません(国も個別のサービス名は出していません)。
先に結論
- 個人事業主は原則として国保+国民年金。社保に入る正規の道は、法人化するか、実際に雇用されて加入要件を満たすこと
- 2026年3月18日の通達で役員として入る型、9月14日の通知で正社員(従業員)として入る型について、「会費が報酬を上回る」「勤務が形だけ」などの場合は資格を認めない考え方が示された
- 9月14日公表の事業所調査では、45社を調査し、11,610人が資格を喪失(8月31日時点)
- 「法人化不要で社保に入れる」とうたうサービスは、加入前に下の5つの質問で確かめる
国保が高すぎて「個人事業主でも社保に入れる」っていう広告が気になってます。怪しいんですか?
2026年に国の考え方がかなりはっきりしたんだ。僕自身、こうしたサービスに入っていて9月に資格を失った側だから、何が起きたかを原文で順番に見ていこう。
1. そもそも個人事業主は社保に入れるのか
個人事業主本人は、会社に雇われている人(被用者)ではないので、原則として国民健康保険+国民年金です。社会保険(健康保険・厚生年金)に入る正規の方法は次のとおりです。
- 法人化して、自分の会社から役員報酬を受け取る(法人化で税金と社会保険料はどう変わるか)
- 別の会社に実際に雇用され、労働時間などの加入要件を満たす
「社保加入サービス」は、個人事業主が会費を払い、サービス側の法人の役員や正社員(従業員)として雇われる形をとることで社保に入る仕組みです。国保+国民年金より会費のほうが安くなる人がいたため広がりました。
2. 2026年に何が変わったか

(1) 3月18日の通達:役員として入る型
厚生労働省の通達(保保発0318第1号・年管管発0318第1号)は、「社会保険料の削減を謳い、個人事業主やフリーランス等を法人の役員とし」、会費等と称して役員報酬を上回る額を払わせている例を取り上げました。役員報酬を上回る額の会費等を払っている場合は、原則として経常的な報酬の支払いとは認められないという考え方です。関連法人に会費を払わせる迂回も同じ法人として扱います。
(2) 9月14日の通知:正社員(従業員)として入る型
3月の通達は役員が対象だったため、「役員ではなく正社員なら対象外」と説明するサービスもありました。9月14日の通知(保保発0914第2号・年管管発0914第2号)は、その役員ではない労働者を対象に、次の2つの観点を示しました。
| 観点 | 資格が認められない可能性があるとき |
|---|---|
| ① 報酬 | 事業所に払う会費等が報酬を上回る(会費等の名称は問わない:勉強費・広告費・掲載料・参加料・コンサルタント料・協力金・委託費など)。同額以下でも、会費等が報酬の多くを占めることが常態化している場合 |
| ② 業務 | 労働時間が常態的に極端に短い。または、業務が自己研さん・形式的な活動報告・会員同士の互助的な紹介・自分の事業をそのまま事業所の業務にしたものにとどまる |
①と②の両方に当てはまれば原則として資格なし、どちらか一方なら就労の実態から個別に判断する、という建て付けです。なお、通知には「極端に短い」が何時間かという数値基準や、保険料をさかのぼって請求するといった記載はありません。
(3) 9月14日公表:事業所調査の結果
同じ日に、3月の通達を受けた事業所調査の結果が公表されました(第85回 社会保障審議会年金事業管理部会 資料4・8月31日時点)。
- 事業所調査を実施した事業所:45社
- 指導により対象者全員の被保険者資格喪失届を提出した事業所:38社(その他は調査継続中)
- 指導により被保険者資格を喪失した人:11,610人
資料は「38社が不正だった」とは書いておらず、事業所名も公表されていません。また、調査の過程で「勤務時間が極端に短い従業員が多数」といった、それまで把握していなかった手法も確認され、それが9月14日の通知につながったと説明されています。
じゃあ、今もある社保加入サービスは全部ダメってことですか?
国は個別のサービス名を挙げていないから、全部とは言えない。でも判断の物差しは公開されたから、自分で当てはめて確かめられるよ。それが次の5つの質問だよ。
3. 加入前に確かめる5つの質問
- 払う会費は、受け取る給与(報酬)より多くないか
会費の名前が「勉強費」「広告費」「協力金」などでも同じです。会費が報酬を上回る形は、3月の通達・9月の通知の両方が問題にしている点です - 月の労働時間は何時間か
数値基準はありませんが、「常態的に極端に短い」場合は経常的な労務の提供とは言えないとされています - 仕事の中身は何か
勉強会への参加、形だけの報告、会員同士の紹介、自分の事業をそのまま業務と呼んでいるだけ、といった内容は、通知が名指しで挙げています - 「法人化不要」「役員ではなく正社員だから安全」をうたっていないか
9月14日の通知は、まさに役員ではない労働者の型を対象にしました - 資格を失ったときの説明があるか
資格を失うと、国保と国民年金に戻る手続きが必要です。過去にさかのぼって失った場合の保険料の扱いまで説明しているかを確かめます
4. すでに加入している・資格を失った人は
資格を失ったら、国保と国民年金への切り替えが必要です(届出は14日以内)。失い方で、次にやることが変わります。
- 退職扱いで失った:条件を満たせば任意継続も選べる(退職日の翌日から20日以内)
- さかのぼって取り消された:その期間の国保と国民年金を払うことになる。国民年金は2年より前の月は払えず、国保は自治体が「保険料」なら2年、「保険税」なら3年がさかのぼれる上限(国民健康保険法110条の2・地方税法17条の5)
手順と期限は社会保険の資格を「退職扱い」で失ったらにまとめています。通知の全文の読み解きはフリーランスの社保加入サービスは違法?で詳しく書いています。
5. 合法に負担を下げるには
- 国保のまま下げる:経費と青色申告特別控除(iDeCo・小規模企業共済は国保には効かない)。節税しても国保が下がらない理由
- 軽減・減免:所得が低い年、会社都合で離職した場合など。国保の減免・軽減制度
- 社保と国保の損得:家族構成と年収で答えが変わります。社会保険と国民健康保険どっちが得?
よくある質問
Q1. 個人事業主が入れる社会保険は違法ですか?
国は個別のサービスが違法かどうかは示していません。ただし、2026年3月18日の通達(役員型)と9月14日の通知(正社員型)で、会費が報酬を上回る、勤務が形だけといった場合は被保険者資格を認めない考え方が示されました。
Q2. 何人が資格を失ったのですか?
9月14日に公表された事業所調査の結果では、45社を調査し、38社が指導により対象者全員の資格喪失届を提出、11,610人が資格を喪失しました(8月31日時点・その他は調査継続中)。
Q3. 「役員ではなく正社員として加入」なら大丈夫ですか?
9月14日の通知は、法人の役員ではない労働者(正社員型)を対象に、会費が報酬を上回る場合や、労働時間が極端に短い・業務が形式的な場合の扱いを示しました。役員か正社員かだけで安全とは言えません。
Q4. 資格を失ったら保険料をさかのぼって払うのですか?
通知自体にはさかのぼって請求する記載はありません。ただ、資格を過去にさかのぼって失った場合は、その期間の国保と国民年金を払う必要があります。国民年金は2年まで、国保は保険料の自治体で2年・保険税の自治体で3年が上限です。
Q5. 個人事業主が社保に入る合法な方法はありますか?
法人化して自分の会社から役員報酬を受け取る方法と、実際に雇用されて加入要件を満たす方法があります。
出典:厚生労働省 保保発0318第1号・年管管発0318第1号(2026年3月18日)、保保発0914第2号・年管管発0914第2号(2026年9月14日)、第85回 社会保障審議会年金事業管理部会 資料4「事業所調査の結果について」(2026年9月14日・8月31日時点)、国民健康保険法110条の2、地方税法17条の5、国民年金法102条



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