最終更新日:2026年8月29日
家賃って何%まで経費にできるんですか? 「50%まで」って書いてある記事と「按分すればOK」って書いてある記事があって…
結論を先に言うと、「何%まで」という基準は法令に書かれていません。国税庁の条文にあるのは割合ではなく、別の言葉です。それを知ると考え方が変わります。
「個人事業主の経費はぶっちゃけどこまで落とせるのか」を調べると、記事によって書いてあることが違います。家賃は50%まで、通信費は8割まで、と数字が並んでいることもあります。
そこで国税庁のタックスアンサーを読みに行きました。割合の基準はどこにも書かれていませんでした。代わりに書かれていたのは、まったく別の判定軸です。
この記事は国税庁 No.2210「必要経費の知識」と No.2215 の記載だけを使って、線引きがどう定められているのかを整理したものです。
- 条文にあるのは「業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合の、その区分できる金額」だけ。%の上限は存在しない
- 経費になるかは払ったかどうかではなく、12月31日までに債務が確定したか(3要件)
- 生計を一にする親族への家賃・給与は経費にならない(青色事業専従者給与を除く)
- 事業税は全額、固定資産税は業務用部分だけ経費になる。所得税・住民税はならない
- 経費は所得控除と違い、国民健康保険料まで下げる
そもそも必要経費とは何か
国税庁 No.2210 は、必要経費に算入できる金額を次の2つと定義しています。
- 総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
- その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額
抽象的ですが、ポイントは「収入を得るために要した」「業務上の」という限定です。ここに金額の上限も、割合の基準も出てきません。
「何%まで」ではなく「区分できるか」
家賃や光熱費のように、仕事とプライベートの両方にかかわる支出のことを家事関連費といいます。ここが「ぶっちゃけどこまで」の中心です。条文はこうです。
家事上の費用は必要経費となりませんが、個人の業務においては一つの支出が家事上と業務上の両方にかかわりがある費用(家事関連費といいます。)となるものがあります。(例)店舗併用住宅に係る費用(租税公課、家賃、水道光熱費など)
この家事関連費のうち必要経費になるのは、取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られます。
読み返してほしいのは最後の一文です。判定基準は「明らかに区分できるか」であって、割合ではありません。
つまり、こういうことです。
- 区分できるなら、その金額が経費になる。30%でも70%でも、根拠があれば根拠どおり
- 区分できないなら、その支出は経費にならない。「だいたい半分だから50%」は区分ではない
「何%までなら安全か」という問いの立て方そのものが、条文とずれています。正しい問いは「その割合を、取引の記録で説明できるか」です。
床面積で按分したなら図面と面積、時間で按分したなら稼働記録。聞かれたときに出せる材料があるかどうかが線引きになります。
家事按分の割合について、法令・通達に数値基準はありません。当サイトでは一次情報に無い数字を書かない方針なので、「家賃は50%まで」のような目安は提示しません。
逆に言えば、そう書いてある記事はどこかの誰かの実務感覚です。参考にはなりますが、税務署に対する根拠にはなりません。

じゃあ年末に来年ぶんをまとめて払っておけば、今年の経費が増やせますよね?
そこも誤解が多いところです。経費になるかどうかは、払ったかどうかでは決まりません。国税庁は「債務が確定したか」で判定すると書いています。
じゃあ「7割」とかにしておけば大丈夫、ではないんですね。
数字を決めることより、その数字の出どころを持っていることが大事です。3割でも根拠があれば通りますし、5割でも根拠が無ければ弱い。そういう構造になっています。
払ったかどうかでは決まらない — 債務確定主義
No.2210 の「必要経費の算入時期」には、こう書かれています。
その年に支払った場合でも、その年に債務の確定していないものはその年の必要経費になりませんし、逆に支払っていない場合でも、その年に債務が確定しているものはその年の必要経費になります。
「債務が確定している」とは、次の3つをすべて満たす場合と定められています。
- その年の12月31日までに債務が成立していること
- その年の12月31日までにその債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること
- その年の12月31日までに金額が合理的に算定できること
ここから2つのことが言えます。
ひとつは「年末に前払いすれば節税」は原則として通らないということ。来年ぶんのサービス料を12月に払っても、その役務の提供という事実がまだ発生していなければ、今年の経費にはなりません。
もうひとつは逆で、12月中に受けたサービスの請求書が翌年1月に来て、支払いも1月でも、今年の経費になるということです。未払いでも債務は確定しているからです。
「支払った日で仕分ける」という感覚のままだと、両方向にずれます。
未払いなのに経費になるって、なんだか不思議です。
「もう使った」なら、その年の費用だという考え方です。12月に受けた仕事の請求が1月払いでも、サービスは12月に受けているので12月の経費。そう考えると自然だと思います。
経費にならないもの(条文に明記されている)
No.2210 が「必要経費にならないものの例」として挙げているのは次のとおりです。
- 生計を一にする配偶者その他の親族に支払う地代家賃など。逆に受け取った人も所得としては考えない。土地や家屋に限らず、その他の資産を借りた場合も同様
- 生計を一にする配偶者その他の親族に支払う給与賃金(青色事業専従者給与を除く)
- 所得税や住民税
- 罰金、科料および過料など
- 公務員に対する賄賂など
実務で効いてくるのは最初の2つです。実家で開業して親に家賃を払っている場合、生計を一にしているなら経費になりません。配偶者に事務作業を手伝ってもらって給与を払う場合も、青色事業専従者給与の手続きをしていなければ経費になりません。
ただしひとつ例外が書かれています。子が生計を一にする父から業務のために借りた土地・建物に課される固定資産税等の費用は、子が営む業務の必要経費になります。家賃そのものはダメでも、その資産にかかる固定資産税は経費にできる、という整理です。
青色事業専従者給与の使い分けは 青色専従者給与で国民健康保険料は下がる?仕組みと「軽減判定には効かない」罠 にまとめています。
実家に家賃を払っているんですが、それはダメなんですね…
生計を一にしているなら経費になりません。ただし受け取った親御さんの側も所得にしなくていいので、両方で消える形です。損得というより、そもそも取引として見ない扱いですね。
経費になるもの(条文に明記されている)
同じく No.2210 が挙げているものです。
- 業務用資産の購入のための借入金など、業務のための借入金の利息
- 業務用資産の取壊し、除却、滅失の損失および業務用資産の修繕に要した費用(一定の場合を除く)
- 事業税は全額必要経費になる
- 固定資産税は業務用の部分に限って必要経費になる
税金のうち事業税だけが「全額」で、固定資産税は業務用部分だけ、所得税と住民税はゼロ。ここは覚えておく価値があります。個人事業税については 個人事業税はいくらかかる?70業種の一覧と、所得税ゼロでも通知が来る理由 に書きました。
なお業務用資産にかかる租税で必要経費になるものは、No.2215 に一覧があります。固定資産税/登録免許税/不動産取得税/地価税/特別土地保有税/事業所税/自動車取得税/自動車税です。
登録免許税には例外があり、特許権や鉱業権のように登録により権利が発生する資産にかかる登録免許税は取得価額に算入しなければなりません。船舶・航空機・自動車のように業務に使うために登録が必要な資産にかかる登録免許税は、取得価額に入れるか経費にするかを選べます。
経費を増やすのと、iDeCoみたいな控除を増やすのって、結局どっちが得なんですか?
国保が絡むと、まったく別物です。経費は国民健康保険料まで下げますが、所得控除は1円も下げません。同じ「節税」でも効く範囲が違います。
経費は国保料まで下げる。所得控除は下げない
ここがソロ節約ラボとして一番伝えたい部分です。
「節税」とひとくくりにされますが、必要経費と所得控除は効く範囲が違います。
- 必要経費(家賃の按分・通信費・事業税など): 事業所得そのものが下がる。だから所得税・住民税・国民健康保険料のすべてに効く
- 所得控除(小規模企業共済・iDeCo・生命保険料控除・ふるさと納税など): 所得税と住民税は下がるが、国民健康保険料は1円も下がらない
国保料は総所得金額等をもとに計算されるため、所得控除は算定に入りません。この論点は iDeCo・小規模企業共済・ふるさと納税で「節税」しても国保は1円も下がらない で詳しく書いています。
だから国保が高くて苦しい人にとっては、経費の精度を上げることのほうが、控除を積むより効きます。逆に言えば、経費で落とせるものを落とし切ってもなお国保が重いなら、保険料の計算式そのものを変える方向を考えることになります。
節税策の全体像は 個人事業主の節税対策 完全ガイド【2026年版】、国保そのものを下げる方法は 国保が高すぎる!年収別シミュレーション&保険料を安くする7つの方法 にまとめています。
結局、明日から何をすればいいですか?
按分の根拠をメモに残すことです。「なぜこの割合なのか」を1行書いておくだけで、条文が求めている「明らかに区分できる」に近づきます。あとから思い出すのは無理です。
やることは「根拠を残す」の一点
条文が求めているのは「取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる」ことです。裏を返せば、記録が無ければ何%にしても弱いということです。
具体的には、按分している支出について次を残しておくと説明しやすくなります。
- 家賃・光熱費: 何をもって按分したか(作業スペースの面積、稼働時間など)と、その数字
- 通信費: 業務利用の実態が分かるもの
- 車両費: 走行記録など、業務での使用が分かるもの
大がかりな帳簿である必要はありません。「なぜこの割合にしたか」を1行残す。それが条文の言う「区分できる」に一番近い行動です。
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よくある質問
Q1. 家賃は何%まで経費にできますか?
法令に割合の基準はありません。国税庁の条文にあるのは「業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合の、その区分できる金額に限られます」という記載だけです。作業スペースの面積や稼働時間など、根拠をもって区分できる金額が経費になります。
Q2. 年末に来年ぶんを前払いすれば今年の経費になりますか?
原則としてなりません。国税庁は「その年に支払った場合でも、その年に債務の確定していないものはその年の必要経費になりません」と明記しています。12月31日までに①債務の成立②給付をすべき原因事実の発生③金額が合理的に算定できること、の3つをすべて満たす必要があります。
Q3. 支払いが翌年になる分は経費にできませんか?
できます。「支払っていない場合でも、その年に債務が確定しているものはその年の必要経費になります」と明記されています。12月中に受けたサービスの請求が1月払いでも、その年の経費です。
Q4. 実家で開業しています。親に払う家賃は経費になりますか?
生計を一にしている場合はなりません。受け取った側も所得として考えません。土地・家屋に限らず、その他の資産を借りた場合も同様です。ただし例外として、その土地・建物に課される固定資産税等の費用は業務の必要経費になります。
Q5. 税金は経費になりますか?
種類で違います。事業税は全額、固定資産税は業務用の部分に限って経費になります。所得税と住民税はなりません。ほかに業務用資産にかかる登録免許税・不動産取得税・地価税・特別土地保有税・事業所税・自動車取得税・自動車税も必要経費に算入されます(登録免許税には例外あり)。
Q6. 経費を増やすのと、iDeCoなどの控除を増やすのはどちらが得ですか?
国民健康保険料まで含めると経費のほうが効く範囲が広いです。経費は事業所得そのものを下げるので所得税・住民税・国保料の3つに効きますが、所得控除は所得税と住民税にしか効かず、国保料は1円も下がりません。
まとめ
「経費はぶっちゃけどこまで」の答えは、割合ではありませんでした。国税庁の条文にあるのは「業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合の、その区分できる金額」という一文だけで、何%までという基準は存在しません。
そして経費になるかどうかは、払ったかどうかでも決まりません。12月31日までに債務が確定したかで判定されます。前払いは原則として今年の経費にならず、未払いでも債務が確定していれば今年の経費になります。
生計を一にする親族への家賃・給与は経費になりません。税金は事業税だけが全額で、所得税と住民税はゼロです。
最後にもうひとつ。経費は国民健康保険料まで下げますが、所得控除は下げません。国保が重いと感じているなら、控除を積むより先に、経費の根拠を整えるほうが効きます。
※ この記事は2026年8月29日時点の国税庁タックスアンサー No.2210・No.2215(いずれも令和7年4月1日現在法令等)の記載をもとにしています。個別の支出が経費に当たるかどうかの判断は、税務署または税理士にご相談ください。



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