最終更新日:2026年8月30日
友人が「自分は会社の社会保険なのに、国民健康保険の納付書が届いた」と言っていました。そんなことあるんですか?
あります。国民健康保険は「世帯主課税主義」だからです。世帯主本人が国保に入っていなくても、世帯の中に加入者が1人でもいれば、納税義務者は世帯主になります。
「国民健康保険はいつまで払うのか」の答えは、実は3つあります。
ひとつは年齢の話で、これは明快です。もうひとつは社保に切り替えたとき。そして3つ目が、意外と知られていない「自分が加入していなくても払い続ける」ケースです。
- 75歳の誕生日当日に国保を抜けて後期高齢者医療制度へ。脱退も加入も手続き不要
- 社会保険に入れば抜ける(こちらは届出が必要)
- ⚠ 世帯主は、自分が国保に入っていなくても納税義務者になる(世帯主課税主義)
- その状態を「擬制世帯」といい、条件を満たせば世帯主変更で加入者本人に移せる
- ⚠ 世帯主が75歳になると、その健康保険の被扶養者は自分で入り直す必要がある
答え1:75歳の誕生日当日に、自動で終わる
さいたま市の案内が明快なので引用します。
75歳になられる方は、それまで加入していた医療保険制度を抜けて、「後期高齢者医療制度」に加入します。
被保険者となる日(資格を取得する日)は、75歳の誕生日当日からです。
ポイントは手続きが要らないことです。市区町村の国民健康保険に加入していた人は脱退の手続きは不要で、後期高齢者医療保険への加入手続きも不要。
資格確認書や資格情報のお知らせは、75歳の誕生日の約1〜2週間前に住所宛へ郵送されます。保険料額決定通知書は、4〜6月生まれなら7月に、7〜3月生まれなら75歳到達月の翌月に届きます。
後期高齢者医療制度の保険料は「均等割額+所得割額」で、個人単位で計算されます。国保が世帯単位で計算されるのとは違う点です。年度の途中で加入した場合は月割になります。

75歳になれば勝手に終わるなら、何も心配いらないですね。
ひとつだけ落とし穴があります。その人の健康保険に扶養で入っていた家族は、一緒に移れません。自分で入り直す手続きが要ります。
⚠ 75歳で「扶養家族が道連れ」になる
同じさいたま市の案内に、こう書かれています。
75歳のお誕生日前までに加入していた健康保険に被扶養者がいる場合、被扶養者の方は、他の方の扶養に入るか、国民健康保険などに加入する手続きが必要です。
後期高齢者医療制度には扶養という仕組みがありません。個人単位の制度だからです。
だから、たとえば夫が75歳になって後期高齢者医療制度へ移ると、それまで夫の健康保険に扶養で入っていた妻は、その日から自分で国保などに加入し直すことになります。手続きは自動ではありません。
すでに国民健康保険に加入している家族については、手続きは不要です。
国保に扶養という考え方がないことは 【国保には扶養がない】個人事業主が親を健康保険の扶養に入れる唯一の方法 でも扱っています。
後期高齢者医療の保険料は、国保より安くなるんですか?
そこは一概に言えません。ただ計算の仕方は変わります。国保は世帯単位ですが、後期高齢者医療は個人単位で「均等割+所得割」。世帯の他の人の所得は乗ってきません。
答え2:社会保険に入れば、そこで終わる
もうひとつの終わり方は、勤め先や社会保険加入サービスを通じて健康保険(社会保険)の被保険者になったときです。
こちらは75歳到達と違い、自分で国保をやめる届出をしないと二重に請求され続けます。社保の資格取得日以降の国保料は最終的に精算されますが、届け出が遅れるとその間の納付書は届きます。
切り替えのタイミングと空白期間の実際は 【2026年8月新ルール】社保に切り替えたらマイナ保険証・資格確認書はどうなる? にまとめました。
で、最初の話に戻るんですが。社保なのに国保の請求が来るのはなぜですか?
世帯主だからです。国保は世帯単位で課税されて、請求先は世帯主。世帯主自身が国保に入っているかどうかは関係ありません。
答え3:世帯主は、自分が入っていなくても払い続ける
ここがこの記事の本題です。宇都宮市のFAQに、そのまま書かれています。
国民健康保険には生まれたばかりの赤ちゃんから高齢の方までどなたでも入れるため、国民健康保険税は世帯主課税主義をとっています。
住民票上の世帯主が、国民健康保険に加入していない場合でも、その世帯の中に国民健康保険加入者がいれば世帯主の人が納税義務者となります。
個人事業主の世帯で、これは頻繁に起こります。
- 夫が会社員(社会保険)、妻が個人事業主(国保) → 世帯主が夫なら、国保の納付書は夫に届く
- 親と同居して開業した → 世帯主が親なら、自分の国保料の請求は親に届く
- 逆に、自分が世帯主で社保に切り替えても、世帯に国保の家族が残っていれば請求は続く
「社保に切り替えたのに国保の納付書が来る」という相談の多くは、これです。自分の分の請求ではなく、世帯に残っている加入者の分を、世帯主として請求されています。
宇都宮市は注意書きも添えています。
世帯主変更の手続きをしていないと、すでに世帯主でない人宛てに国民健康保険に関する通知が送られたり、正しく税額計算ができない場合があります。
実家で開業したので、たぶん父に請求が行ってます…
それが典型例です。世帯主が父なら、あなたの国保料の納税義務者は父になります。金額はあなたの所得で計算されているのに、請求書だけ父に届く、という状態ですね。
「擬制世帯」なら、世帯主を移せる
この状態には名前が付いています。福井市の説明が丁寧です。
国民健康保険制度は、世帯主が国民健康保険に加入していない場合でも、世帯主が国民健康保険に関する届け出や保険税を納付する義務を負います。
世帯主が国民健康保険に加入しておらず、その世帯に国民健康保険の加入者がいる世帯のことを「擬制世帯」といい、国民健康保険に加入していない世帯主のことを「擬制世帯主」といいます。
そして重要なのがここです。
擬制世帯の場合に限り、国民健康保険加入者を国民健康保険上の世帯主とする「世帯主変更」をすることができます。
なお、国民健康保険上の世帯主を変更しても、住民基本台帳法上の世帯主は変更されません。
つまり「国保の上での世帯主」だけを、実際の加入者に付け替えられるということです。住民票の世帯主はそのままなので、他の手続きへの影響を心配する必要はありません。
福井市が挙げている変更の要件は、次のすべてです。
- 擬制世帯主が国民健康保険税を完納していること
- 擬制世帯主と新世帯主の双方が同意していること
- 変更後も納付と各種届出の義務が確実に見込めること
1つ目に注意してください。滞納があると変更できません。付け替えたい場合は、先に完納する必要があります。
ここで引用したのは宇都宮市と福井市の案内です。世帯主変更の可否・様式・必要書類は自治体ごとに異なります。また一定の場合には住民基本台帳法上の世帯主に戻されることがあります。
実際に手続きする際は、お住まいの市区町村の国民健康保険の窓口で確認してください。
世帯主を変えたら、保険料は安くなるんですか?
安くはなりません。誰に請求するかが変わるだけです。金額を下げたいなら、計算式そのものに手を入れる必要があります。
世帯主変更は「安くなる手」ではない
誤解されやすいので書いておきます。世帯主変更は納税義務者を付け替えるだけで、保険料額は変わりません。
それでも意味があるのは、こういう場合です。
- 会社員の配偶者に自分の国保料の通知が届くのを避けたい
- 実家の親に自分の保険料の請求が行くのをやめたい
- 口座振替の名義を実際の加入者に合わせたい
逆に、金額そのものを下げたいなら別の話です。国保料は世帯の所得をもとに計算されるため、世帯構成を変えるか、加入する制度そのものを変えるかになります。
世帯分離で下がるかどうかの試算は 世帯分離で国民健康保険料はいくら安くなる?年収別シミュレーション、年収別にいくらかかるかは 国保が高すぎる!年収別シミュレーション&保険料を安くする7つの方法 にまとめています。
とりあえず自分の世帯がどうなっているか確認します。
納付書の宛名を見るのが一番早いです。自分の名前でなければ擬制世帯です。変えたいなら完納が条件なので、滞納があるならそこからになります。
例外:65〜74歳でも後期高齢者医療になる場合がある
「75歳から」と書きましたが、条文には例外があります。
…六十五歳以上七十五歳未満の者であつて、厚生労働省令で定めるところにより、政令で定める程度の障害の状態にある旨の当該後期高齢者医療広域連合の認定を受けたもの
「政令で定める程度の障害の状態」は同法施行令 第3条と別表で定められています。別表に挙げられているのは、たとえば次のような状態です。
- 視覚障害(両眼の視力がそれぞれ0.07以下、など)
- 両耳の聴力レベルが90デシベル以上
- 平衡機能に著しい障害
- 咀嚼の機能を欠く
- 音声または言語機能に著しい障害
- 上肢・下肢・体幹の障害(項目が続きます)
つまり65歳以上75歳未満でも、この状態にあると広域連合の認定を受ければ、後期高齢者医療制度の被保険者になります。その時点で国民健康保険は抜けることになります。
この認定は本人の申請にもとづいて広域連合が行うもので、75歳到達のように自動では切り替わりません。
また、後期高齢者医療制度に扶養の仕組みはないため、65〜74歳でも「親を健康保険の扶養に入れる」ことができない場合があるということでもあります。該当しそうな場合は、お住まいの広域連合または市区町村の窓口でご確認ください。
3つの答えを並べると
整理します。
| 終わり方 | タイミング | 手続き |
|---|---|---|
| 75歳になる | 75歳の誕生日当日 | 不要(脱退も加入も自動) |
| 社会保険に入る | 資格取得日 | 必要(届け出ないと請求が続く) |
| 世帯に加入者がいなくなる | 最後の加入者が抜けた時点 | 加入者ごとの届出が必要 |
3つ目が、この記事でいちばん伝えたかった部分です。「自分が国保をやめた」ことと「国保の請求が止まる」ことは同じではありません。
なおこの「世帯で連帯する」構造は国民年金にもあります。第1号被保険者の保険料は、世帯主と配偶者が連帯して納付義務を負い、未納を放置すると督促状も差押えも連帯納付義務者に及びます。詳しくは 国民年金の免除は「しない方がいい」のか に書きました。
限定
ソロ節約ラボと記入するだけで
よくある質問
Q1. 国民健康保険はいつまで払いますか?
75歳の誕生日当日に後期高齢者医療制度へ移るため、そこで終わります。市区町村の国保に加入していた方は脱退手続きも加入手続きも不要です。それより前でも、社会保険の被保険者になれば抜けられます。
Q2. 社会保険に入っているのに国保の納付書が届きました。なぜですか?
世帯主だからです。国民健康保険税は世帯主課税主義で、住民票上の世帯主が国保に加入していなくても、世帯の中に加入者がいれば世帯主が納税義務者になります。届いているのはご自身の分ではなく、世帯に残っている加入者の分です。
Q3. 請求先を実際の加入者に変えられますか?
擬制世帯(世帯主が国保未加入で、世帯に加入者がいる状態)に限り、国民健康保険上の世帯主変更ができます。要件は「擬制世帯主が国保税を完納していること」「双方が同意していること」「変更後も納付と届出が確実に見込めること」。住民基本台帳法上の世帯主は変わりません。
Q4. 世帯主を変えると保険料は安くなりますか?
安くなりません。誰に請求するかが変わるだけで、保険料額そのものは変わりません。金額を下げたい場合は、世帯構成を見直すか、加入する制度自体を変えることになります。
Q5. 75歳になったら、扶養に入れていた家族はどうなりますか?
後期高齢者医療制度には扶養の仕組みがないため、被扶養者だった方は他の方の扶養に入るか、国民健康保険などに加入する手続きが必要です。すでに国民健康保険に加入している家族については手続きは不要です。
Q6. 手続きはどこですればいいですか?
お住まいの市区町村の国民健康保険の窓口です。世帯主変更の可否・様式・必要書類は自治体ごとに異なり、一定の場合には住民基本台帳法上の世帯主に戻されることもあります。この記事では宇都宮市と福井市の案内を引用していますが、必ずご自身の自治体でご確認ください。
まとめ
国民健康保険が終わるのは、75歳の誕生日当日です。脱退も加入も手続きは要りません。それより前に社会保険へ移れば、そこで抜けられます(こちらは届出が必要)。
そして見落とされやすいのが3つ目です。国民健康保険税は世帯主課税主義で、世帯主自身が国保に入っていなくても、世帯に加入者がいれば納税義務者は世帯主になります。
「社保に切り替えたのに国保の請求が来る」の正体はこれです。自分がやめたことと、請求が止まることは別だと知っておいてください。
請求先を実際の加入者へ移したいなら、擬制世帯に限って世帯主変更ができます。ただし滞納があると変更できませんし、保険料が安くなるわけでもありません。
※ この記事は2026年8月30日時点で、厚生労働省およびさいたま市・宇都宮市・福井市の公式サイトに掲載されている内容をもとにしています。国民健康保険の運用は自治体ごとに異なる部分があるため、手続きの可否や必要書類はお住まいの市区町村の窓口でご確認ください。65歳から74歳で一定の障害がある方の認定については、高齢者の医療の確保に関する法律第50条2号および同法施行令別表にもとづいて記載していますが、個別の認定可否は広域連合の判断によります。



コメント