最終更新日:2026年8月24日
学生時代に猶予してもらった国民年金、追納の案内が来たんですけど20万円くらいするんです。ネットだと「追納は損」って書いてる記事もあって……。
その「損」の計算、社会保険料控除を入れていないことが多いんです。所得のある個人事業主なら、そこで結論が変わります。
結論:控除を入れると回収は10.5年から8.4年に縮む
追納の損得は「払った額を、増える年金で何年かけて取り戻せるか」で判断できます。この計算に社会保険料控除を入れるかどうかで、答えが変わります。
- 支出:17,510円 × 12か月 = 210,120円
- 増える年金:日本年金機構によると年間で約2万円
- 額面での回収:210,120 ÷ 20,000 = 約10.5年
- 所得税10%+住民税10%の人なら控除で42,024円の減税 → 実質負担168,096円 → 約8.4年
- 所得税20%+住民税10%の人なら63,036円の減税 → 実質負担147,084円 → 約7.4年
保険料額と「年約2万円」は日本年金機構の公表値。回収年数はそこからの単純計算です。
ポイントは税率が高い人ほど回収が早くなることです。所得のある個人事業主ほど有利に働く制度で、「一律に損」とは言えません。
65歳から受給を始めるなら、額面計算だと約75.5歳で元が取れます。控除を入れれば約73.4歳。日本人の平均寿命を考えると、多くの人にとっては回収できる計算になります。
追納制度とは — 10年以内の免除・猶予期間が対象
国民年金保険料の免除、納付猶予、学生納付特例を受けた期間について、あとから保険料を納めて老齢基礎年金を満額に近づける制度です。
- 対象は追納が承認された月の前10年以内の免除等期間
- 1年分追納すると、全額免除の期間なら年金が年間で約1万円、納付猶予・学生納付特例の期間なら年間で約2万円増える
- 追納した保険料は社会保険料控除の対象
- 一部免除の期間は、納付すべき一部保険料が納付されていないと追納できない
見落とされやすいのが、納付猶予と学生納付特例の期間は「受給資格期間」には算入されるが、追納しないと年金額には反映されないという点です。「猶予してもらったから大丈夫」と思っていると、受給額が減ります。
令和8年度に追納するといくらか
追納する保険料は、免除等を受けた年度によって変わります。日本年金機構が公表している令和8年度中の追納額(全額免除・納付猶予・学生納付特例の場合、月額)は次のとおりです。
- 平成28年度分:16,850円 / 平成29年度分:17,070円 / 平成30年度分:16,900円
- 令和元年度分:16,950円 / 令和2年度分:17,070円 / 令和3年度分:17,110円
- 令和4年度分:16,990円 / 令和5年度分:16,770円
- 令和6年度分:16,980円(加算額なし)/ 令和7年度分:17,510円(加算額なし)
4分の3免除・半額免除・4分の1免除の場合はそれぞれ別の金額になります。

古い年度のほうが安いのかと思ったら、そうでもないんですね。
加算額が乗るからです。放っておくほど高くなる仕組みなので、やるなら早いほうがいい。
加算額に注意 — 3年度目から上乗せされる
日本年金機構は、加算のルールをこう定めています。
免除・納付猶予の承認を受けた期間の翌年度から起算して3年度目以降に保険料を追納する場合、当時の保険料額に経過期間に応じた加算額が上乗せされます。
令和8年度中に追納する場合、令和6年度分と令和7年度分には加算額がありません。それより前の年度分には加算が乗っています。
つまり直近2年度分は「割増なし」で追納できるということです。追納を検討しているなら、この期間を逃さないほうが有利になります。
追納は納付方法が限られる
ここは注意が必要です。追納は通常の国民年金保険料とは納付の仕組みが違います。
まず年金事務所に申込書を提出し、届いた納付書で支払う流れになります。提出先はお近くの年金事務所で、街角の年金相談センターでは手続きできません。窓口のほか郵送でも可能です。
使える:金融機関・郵便局/コンビニエンスストア/電子納付(Pay-easy)/スマートフォンアプリ
使えない:口座振替/クレジットカード/ねんきんネットを活用した「納付書によらない納付」
所得税なら振替納税やクレジットカード納付が選べますが、追納ではどちらも使えません。所得税側の選択肢については所得税の納付方法8つを比較で整理していますが、追納と混同しないよう注意してください。
なお「ねんきんネット」で追納申込書を作成できますが、これは電子申請ではありません。印刷して年金事務所に提出する必要があります。
控除が増えるってことは、確定申告のときに戻ってくるんですか?
それに加えて、予定納税を減らす申請にも使えます。確定申告を待たずに手元の資金が楽になる。
追納した年は、予定納税の減額申請もできる
追納した保険料は社会保険料控除の対象になります。ここで効いてくるのが、国税庁が予定納税の減額申請の事由として「社会保険料控除の控除額が増加する場合」を明記していることです。
社会保険料控除そのものの使い方——対象になる保険料の範囲や、前納で控除する年を選ぶ方法まではフリーランスの確定申告で社会保険料控除を最大化する方法で整理しています。
つまり、まとまった額を追納して社会保険料控除が前年より増えるなら、その年の予定納税を減らす申請ができるということになります。確定申告での精算を待たずに、資金繰りを改善できます。
令和8年分の第2期分のみの減額申請は11月1日〜11月15日が提出期限です(第2期分の納期限は11月30日)。制度の詳細は予定納税とは?第2期11月30日・減額申請は11月15日までで解説しています。
それでも国民年金と国保の負担が重いなら
追納は「過去の穴を埋める」手段であって、これから毎年かかる保険料を軽くするものではありません。
個人事業主が毎年払う国民健康保険料と国民年金保険料は、所得が上がるほど重くなります。追納の損得を考える前に、そもそも毎年の負担を減らせないかを確認しておく価値があります。
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よくある質問
Q1. 追納できるのはいつまでですか?
追納が承認された月の前10年以内の免除等期間が対象です。10年を過ぎた期間は追納できなくなります。
Q2. 追納すると年金はいくら増えますか?
日本年金機構によると、1年間分を追納した場合、全額免除の期間なら年間で約1万円、納付猶予や学生納付特例の期間なら年間で約2万円増えます。
Q3. 「追納は損」という意見をどう考えればいいですか?
額面だけで計算すると回収に約10.5年かかりますが、追納した保険料は社会保険料控除の対象です。所得税10%+住民税10%の人なら実質負担が約168,096円まで下がり、回収は約8.4年に縮みます。税率が高い人ほど有利になるため、所得のある個人事業主とそうでない人で結論が変わります。
Q4. 古い年度のほうが安いのですか?
逆です。免除等の承認を受けた期間の翌年度から起算して3年度目以降に追納すると、当時の保険料額に加算額が上乗せされます。令和8年度中に追納する場合、令和6年度分と令和7年度分には加算額がありません。
Q5. クレジットカードや口座振替で追納できますか?
できません。追納で使えるのは金融機関・郵便局、コンビニエンスストア、電子納付(Pay-easy)、スマートフォンアプリです。口座振替、クレジットカード、ねんきんネットの「納付書によらない納付」は利用できません。
Q6. 学生納付特例を使ったまま追納しないとどうなりますか?
納付猶予や学生納付特例の期間は年金の受給資格期間としては計算されますが、追納しないと年金額には反映されません。受給資格は満たせても、受け取る額は減ります。
Q7. 追納の申し込みはどこでできますか?
お近くの年金事務所です。街角の年金相談センターでは手続きできません。窓口のほか郵送でも提出できます。ねんきんネットで申込書を作成することもできますが電子申請ではないため、印刷して年金事務所へ提出する必要があります。
まとめ
- 追納できるのは承認月の前10年以内。過ぎると権利が消える
- 3年度目以降は加算額が乗る。令和8年度中なら令和6年度分・令和7年度分は加算なし
- 損得は社会保険料控除を入れて計算する。額面10.5年が、税率20%なら8.4年、30%なら7.4年に縮む
- 追納した年は予定納税の減額申請にも使える(11月15日期限)
- 納付方法は納付書のみ。クレジットカードも口座振替も使えない
追納は過去の期間を埋める制度です。これから毎年かかる保険料そのものを軽くしたい場合は、別の検討が必要になります。



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