最終更新日:2026年8月29日
開業届って出すとデメリットがあるって聞いて、まだ出せていません。もう開業から2か月経ってしまって…期限も過ぎましたよね?
過ぎていないかもしれません。国税庁の現在の記載では、提出期限は「その年分の確定申告期限まで」です。「1か月以内」と書いてある記事が多いのですが、公式ページを2つ見ても、そうは書かれていませんでした。
「開業届 デメリット」で検索すると、失業給付が受けられなくなる、扶養から外れる、といった話が並びます。
そこで国税庁とハローワークの公式ページを読みに行きました。結果として分かったのは、デメリットとして語られていることの多くは、一次情報では断定できないということと、そもそも提出期限の説明が公式と食い違っているということでした。
- 国税庁の現在の記載では、開業届の提出期限は「事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限まで」
- 本当に急ぐのは青色申告承認申請書(3月15日、または開業から2か月以内)。ここを外すと65万円控除が消える
- 「失業給付が受けられない」は公式の列挙に含まれていない。断定できない
- 「扶養から外れる」は健康保険組合ごとの基準で、一次情報を特定できない
- 1か月以内が本当に必要なのは給与支払事務所等の開設届出書(人を雇う場合)
提出期限は「確定申告期限まで」と書かれている
国税庁の2つのページを確認しました。どちらも同じ記載です。
[提出時期]事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限までに提出してください。
なお、提出期限が土・日曜日・祝日等に当たる場合は、これらの日の翌日が期限となります。
タックスアンサー No.2090「新たに事業を始めたときの届出など」(令和8年1月1日現在法令等)の表でも、個人事業の開廃業等届出書の提出期限は「事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限まで」となっています。
つまり、たとえば2026年5月に開業したなら、2026年分の確定申告期限までに出せばよい、という書き方です。
当サイトが確認できたのは「2026年8月29日時点の国税庁の記載がこうなっている」という事実だけです。いつ、どの改正でこうなったのかは確認できていません。
そのため「1か月以内から変わりました」とは書きません。ただし、提出前に自分で確認したい方のために出典を挙げておきます。国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」とタックスアンサー No.2090 です。
いずれにせよ、「1か月を過ぎたからもう出せない」ということはありません。開業届に提出しなかった場合の罰則規定も設けられていません。

じゃあ急がなくていいんですね。安心しました。
開業届は急がなくていいですが、別の書類は急ぎます。青色申告承認申請書です。こちらを外すと、その年は65万円控除が使えません。
本当に締切が厳しいのは青色申告承認申請書
国税庁の表から、開業時に関係する主な届出書と期限を抜き出します。
| 届出書 | 提出期限 |
|---|---|
| 個人事業の開廃業等届出書 (いわゆる開業届) | 事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限まで |
| 所得税の青色申告承認申請書 | 原則、青色申告をしようとする年の3月15日まで。その年の1月16日以後に新たに事業を開始した場合は、その事業開始等の日から2月以内 |
| 青色事業専従者給与に関する届出書 | 必要経費に算入しようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後に開業/新たに専従者を有することとなった場合はその日から2か月以内) |
| 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書 | 開設・移転・廃止の事実があった日から1か月以内 |
| 消費税課税事業者選択届出書/簡易課税制度選択届出書 ほか | 原則、適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで(事業を開始した日の属する課税期間等であればその課税期間中) |
| 適格請求書発行事業者の登録申請書 | 免税事業者は登録希望日(提出日から15日以降)を記載して提出 |
並べてみると分かりますが、「1か月以内」という期限が本当に付いているのは給与支払事務所等の開設届出書です。これは人を雇って給与を払う場合の書類なので、ひとりで始める人には関係ありません。
そして青色申告承認申請書だけが、遅れると取り返しがつきません。3月15日、または1月16日以後の開業ならその日から2か月以内。ここを過ぎるとその年は白色申告になり、65万円の青色申告特別控除が使えなくなります。
青色申告特別控除が事業税では足し戻される話は 個人事業税はいくらかかる?70業種の一覧と、所得税ゼロでも通知が来る理由 に書きました。所得税では効くので、取れるなら取っておくべき控除です。
2か月以内、けっこう短いですね…
1月16日以後に開業した人はここが本番です。開業届と一緒に出すのがいちばん確実で、実際どちらも同じ税務署に出す書類なので、まとめて片づけてしまうのが楽です。
「失業給付が受けられなくなる」は断定できない
開業届のデメリットとして最もよく挙げられるのがこれです。ハローワークの公式ページを確認しました。
基本手当の受給要件は次のとおりです。
ハローワークに来所し、求職の申込みを行い、就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、本人やハローワークの努力によっても、職業に就くことができない「失業の状態」にあること。
そして「基本手当を受けることができません」として公式が挙げているのは、次の4つだけです。
- 病気やけがのため、すぐには就職できないとき
- 妊娠・出産・育児のため、すぐには就職できないとき
- 定年などで退職して、しばらく休養しようと思っているとき
- 結婚などにより家事に専念し、すぐに就職することができないとき
「開業した場合」は、この列挙に含まれていません。
受給要件が「失業の状態」である以上、事業を始めた人の扱いが問題になるのは確かです。ただし公式に断定的な記載がない以上、当サイトでは「開業届を出すと失業給付が受けられなくなる」とは書きません。
退職して開業を考えていて、基本手当も受け取りたい場合は、手続きの前にハローワークで自分のケースを確認してください。受給できるか、あるいは再就職手当の対象になるかは、個別の状況によります。
退職後の手続き全体の順番は 【退職後30日】会社員→フリーランスの社会保険手続きロードマップ|完全チェックリスト にまとめています。
扶養から外れる、というのもよく見かけます。これは本当ですか?
これも断定できません。健康保険の扶養の基準は組合ごとに違うので、一次情報がひとつに定まらないんです。加入している健保組合に聞くしかありません。
「扶養から外れる」も、組合ごとで違う
健康保険の被扶養者の認定基準は、加入している健康保険組合や協会けんぽによって運用が異なります。「開業届を出した時点で外れる」と一律に決まっているわけではありません。
当サイトでは一次情報を特定できないため、この点について断定的なことは書きません。配偶者や親の扶養に入っている状態で開業を考えているなら、その健康保険組合に直接確認してください。
なお、国民健康保険には扶養という仕組み自体がありません。この違いは 【国保には扶養がない】個人事業主が親を健康保険の扶養に入れる唯一の方法 で扱っています。
公式に書いていないことは、書けないんですね。
書けません。ただ、それが分かるだけでも動きが変わります。ネットで探し続けるより、ハローワークか健保組合に電話したほうが早い、という結論になりますから。
税務署以外にも届出が要る場合がある
国税庁のページには、こういう注記があります。
なお、都道府県税事務所、年金事務所、労働基準監督署等にも届出書等の提出が必要となる場合もありますので、各行政機関へご確認ください。
開業届は税務署に出すものですが、それで全部が終わるわけではありません。都道府県税事務所への事業開始等申告書などが必要な場合があります。個人事業税の仕組みは 個人事業税はいくらかかる? に書きました。
税務署に出せば全部終わりだと思っていました。
国税庁自身が「他の行政機関にも確認してください」と書いています。都道府県税事務所への届出などが別に要ることがあるので、税務署で終わりにしないでください。
本当のデメリットは、社会保険が全部自分持ちになること
ここまで見てきたとおり、開業届そのもののデメリットは、一次情報で確認できる範囲ではほとんどありません。罰則もなく、期限も現在は確定申告期限までです。
実際に重いのは、開業届の有無ではなく個人事業主になること自体のほうです。
- 国民健康保険: 会社員時代の労使折半が無くなり、全額自己負担になる
- 国民年金: 令和8年度で月17,920円。厚生年金の上乗せも無くなる
- 傷病手当金がない: 国民健康保険には原則ありません
国保がいくらになるかの試算は 国保が高すぎる!年収別シミュレーション&保険料を安くする7つの方法、国民年金をいつまで払うのかは 国民年金はいつまで払う?原則60歳・任意加入で65歳 にまとめています。
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よくある質問
Q1. 開業届の提出期限は開業から1か月以内ではないのですか?
2026年8月29日時点の国税庁の記載では、「事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限まで」です。タックスアンサー No.2090(令和8年1月1日現在法令等)と様式案内ページの両方で同じ記載を確認しました。いつどう変わったかまでは確認できていないため、当サイトでは「現在の公式記載」として書いています。
Q2. 開業届を出さないと罰則がありますか?
開業届の未提出に対する罰則規定は設けられていません。ただし青色申告承認申請書を出していなければ青色申告はできず、65万円の青色申告特別控除は使えません。
Q3. いちばん急ぐ書類はどれですか?
所得税の青色申告承認申請書です。原則は青色申告をしようとする年の3月15日まで、その年の1月16日以後に開業した場合は開業から2月以内。ここを過ぎるとその年は白色申告になります。
Q4. 開業届を出すと失業給付が受けられなくなりますか?
断定できません。ハローワークが「基本手当を受けることができません」として挙げているのは、病気やけが/妊娠・出産・育児/定年後の休養/結婚による家事専念の4つで、開業は列挙されていません。受給要件は「失業の状態」であることなので、実際の扱いは個別判断になります。手続き前にハローワークで確認してください。
Q5. 開業届を出すと扶養から外れますか?
健康保険の被扶養者の認定基準は健康保険組合ごとに異なります。一律に決まっているわけではないため、当サイトでは断定しません。加入している健康保険組合に直接ご確認ください。
Q6. 税務署に出せば手続きは終わりですか?
終わらない場合があります。国税庁も「都道府県税事務所、年金事務所、労働基準監督署等にも届出書等の提出が必要となる場合もありますので、各行政機関へご確認ください」と注記しています。
思っていたより、開業届そのものは怖くないんですね。
怖いのは開業届ではなく、そのあとに来る保険料のほうです。会社が半分払ってくれていたものが全部自分持ちになる。そこだけは先に数字を見ておいたほうがいいです。
まとめ
開業届のデメリットを一次情報で確認した結果、確認できたものはほとんどありませんでした。
提出期限は、2026年8月29日時点の国税庁の記載では「その年分の確定申告期限まで」。よく書かれる「1か月以内」ではありません。未提出への罰則規定もありません。
本当に急ぐのは青色申告承認申請書です。3月15日、または1月16日以後の開業ならその日から2か月以内。ここを外すと、その年の65万円控除が消えます。
「失業給付が受けられない」「扶養から外れる」は、どちらも公式に断定的な記載がありません。心配なら、開業届の心配をするより先にハローワークと健康保険組合に電話したほうが早いと思います。
※ この記事は2026年8月29日時点で国税庁およびハローワークインターネットサービスの公式サイトに掲載されている内容をもとにしています。提出期限や取り扱いは変わることがあるため、手続き前に最新の情報をご確認ください。個別の判断は税務署・ハローワーク・健康保険組合にご相談ください。



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