最終更新日:2026年8月12日
会社都合で退職することになりました。「会社都合なら国保が7割引になる」ってSNSで見たんですが、本当ですか?
制度は実在しますが、「7割引」という表現は不正確です。正しくは前年の給与所得を30/100とみなして保険料を計算し直す制度。下がるのは所得割の給与所得ぶんで、均等割が直接割引されるわけではありません。仕組みを正確に押さえましょう。
倒産・解雇・雇い止めなどで職を失った人の国民健康保険料を軽くする「非自発的失業者に係る保険料の軽減制度」。退職後の家計に直結する重要な制度ですが、ネット上では「保険料が7割引」といった不正確な説明が広まっています。
この記事では、国民健康保険法施行令29条の7の2第2項と厚生労働省通知(平成22年保国発第610001号)に基づく正確な仕組みを、対象者の離職コード・期間・申請書類まで含めて整理します。
✅ この記事でわかること
- 前年の給与所得を「30/100」として算定する正確な仕組み
- 「7割引」という俗説のどこが間違いか(均等割・給与以外の所得)
- 対象になる離職理由コードの一覧(特定受給資格者・特定理由離職者)
- 軽減が効く期間(最大2年)と終了するタイミング
- 申請に必要な書類
1. どんな制度か|法令上の根拠
非自発的な理由(倒産・解雇・雇い止めなど)で離職した人が国民健康保険に加入する場合、保険料の算定に使う前年の給与所得を30/100として計算する制度です。根拠は次のとおりです。
- 国民健康保険法施行令 第29条の7の2 第2項
- 厚生労働省通知 平成22年保国発第610001号
全国共通の法定制度なので、どの市区町村でも使えます。退職からフリーランス転身までの保険の全体像は退職→フリーランスの保険ロードマップで整理しています。
2. 「7割引」ではない|正確な仕組み
この制度でやっていることは、割引ではなく「所得の読み替え」です。
💡 前年の「給与所得」を30/100とみなして計算する
たとえば前年の給与所得が400万円なら、保険料の計算上は120万円(30/100)の給与所得があったものとして扱われます。この読み替えは所得割の算定と低所得世帯向けの軽減判定の両方に効きます。
「7割引」という俗説との違いを整理すると、次の3点が重要です。
| 俗説 | 正確な仕組み |
|---|---|
| 保険料そのものが7割引になる | 割引ではなく、給与所得の評価が7割減(30/100で算定)になる |
| 均等割も安くなる | 均等割が直接減る制度ではない。ただし所得の読み替えの結果、軽減判定(7割・5割・2割軽減)に該当しやすくなることはある |
| 全部の所得が対象 | 30/100になるのは給与所得だけ。事業所得・不動産所得など給与以外の所得はそのまま算定される |
なるほど、給与所得の評価が7割減だから「7割引」と誤解されてるんですね。副業の事業所得があった場合はどうなるんですか?
事業所得はそのまま計算に入ります。30/100になるのは給与所得だけです。だから「前年は副業収入が大きかった」という人は、思ったほど下がらないこともあります。それでも申請しない理由はありません。
3. 対象者|離職理由コードで決まる
対象は、雇用保険の特定受給資格者または特定理由離職者として失業等給付の受給資格がある人です。該当するかどうかは、ハローワークが発行する雇用保険受給資格者証の「離職理由コード」で判定されます。
| 区分 | 離職理由コード | 主な例 |
|---|---|---|
| 特定受給資格者 | 11・12・21・22・31・32 | 倒産・解雇など |
| 特定理由離職者 | 23・33・34 | 雇い止め・正当な理由のある自己都合退職など |
⚠️ 通常の自己都合退職は対象外
上記コード以外(一般の自己都合退職など)は対象になりません。また、失業等給付の受給資格があることが前提なので、雇用保険に入っていなかった場合も使えません。なお年齢要件(離職時65歳未満とする運用)を設けている自治体の案内が一般的ですが、条件の詳細はお住まいの自治体の窓口・公式ページで要確認です。
4. 軽減される期間|最大2年
軽減が効くのは、離職日の翌日が属する月から、その月の属する年度の翌年度末までです。離職のタイミングによって、おおむね1年強〜最大2年の幅になります。
- 例:2026年4月に離職 → 2026年4月分から2027年度末(2028年3月)まで
- 例:2027年3月に離職 → 2027年3月分から2027年度末(2028年3月)まで+前月までの2026年度分
途中で就職して職場の健康保険(社保)に加入すると、その時点で軽減は終了します。再離職した場合の扱いなどイレギュラーなケースは自治体に確認してください。
📝 任意継続と比較してから決める
会社都合退職なら、この軽減で国保が大幅に下がる可能性が高く、健康保険の任意継続(在職時の約2倍・全額自己負担)より国保が有利になるケースが増えます。ただし任意継続の申請期限は資格喪失から20日以内。退職前のチェックリストで、両方の見積もりを退職直後に済ませるのが安全です。
自分が対象だと分かったら、どう動けばいいですか?
申請しないと1円も安くなりません。必要書類から確認しましょう
5. 申請方法と必要書類
自動では適用されません。市区町村の国保窓口への届出が必要です。必要書類は次のとおりです。
- 雇用保険受給資格者証(両面)…離職理由コードの確認に使われます
- 本人確認書類
- マイナンバーがわかるもの
- 届出書(窓口・自治体サイトで入手)
受給資格者証はハローワークで雇用保険の手続きをしないと発行されません。「ハローワークで求職申込み→受給資格者証の交付→国保窓口で軽減の届出」という順番になります。オンライン申請の可否や書類の細部は自治体により異なるため、事前に自治体の公式ページを確認してください。
6. 併用できる制度|それでも払えないとき
- 低所得世帯の軽減(7割・5割・2割):この制度の所得読み替えは軽減判定にも効くため、結果として均等割の軽減に該当することがあります。判定は自治体が行うので申請時に確認を
- 減免制度:災害・所得急減などを理由とする自治体独自の減免と併せて検討できる場合があります(減免・軽減制度の全体像)
- 納付が苦しい場合:放置せず分割納付などの相談を。対応の選択肢は国保が払えないときの対処ガイドにまとめています
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7. よくある質問
Q1. 自己都合退職ですが使えますか?
通常の自己都合退職(対象コード以外)は使えません。ただし正当な理由のある自己都合退職(コード33・34など)は特定理由離職者として対象になります。判定は受給資格者証の離職理由コードで行われます。
Q2. 均等割も安くなりますか?
均等割を直接減らす制度ではありません。ただし給与所得を30/100として読み替えた結果、低所得世帯向けの軽減判定(7割・5割・2割)に該当すれば、間接的に均等割が下がることはあります。
Q3. 失業手当をもらい終わったら軽減も終わりますか?
いいえ。軽減期間は「離職日翌日の属する月〜その年度の翌年度末」で決まっており、失業等給付の受給終了とは連動しません。終了するのは期間満了か、就職して社保に加入したときです。
Q4. 国保料を自分で払ったら確定申告で控除できますか?
できます。払った国民健康保険料は全額が社会保険料控除の対象です(参考:社会保険料控除の解説)。
Q5. 申請が遅れたら軽減は受けられませんか?
届出が遅れた場合の遡及の扱いは自治体の運用によります。気づいた時点で早めに国保窓口へ相談してください。
8. まとめ
- 会社都合等の非自発的失業者は、前年の給与所得を30/100として国保料を算定してもらえる(施行令29条の7の2第2項)
- 「7割引」は不正確。下がるのは給与所得ぶんの所得割で、均等割は直接減らず、給与以外の所得は対象外
- 対象は離職コード11・12・21・22・31・32(特定受給資格者)と23・33・34(特定理由離職者)
- 期間は離職日翌日の属する月から翌年度末まで(最大2年)。社保加入で終了
- 申請には雇用保険受給資格者証(両面)が必要。ハローワークの手続きが先
【免責事項】本記事は2026年8月時点の国民健康保険法施行令・厚生労働省通知(平成22年保国発第610001号)および中野区・渋谷区・大津市など自治体公式ページの公開情報に基づきます。年齢要件や届出書式・遡及適用など運用の細部は自治体により異なる場合があります。実際の適用可否・保険料は必ずお住まいの市区町村へご確認ください。



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