最終更新日:2026年8月29日
収入が落ちたので国民年金を免除申請しようと思ったんですが、「免除はしない方がいい」って書いてある記事を見つけて…やめたほうがいいですか?
逆です。払えないなら、免除申請は絶対にしたほうがいい。年金機構が公式に出している表を見れば1分で分かります。比べるべきは「免除 vs 納付」ではなく「免除 vs 未納」なんです。
「国民年金 免除 しない方がいい」で検索する人には、2つのまったく違う立場が混ざっています。
- 免除すると将来の年金が減ると聞いた。だからしない方がいいのか?
- 免除できる条件だが申請していない。このままでいいのか?
結論から言うと、前者は「減るのは事実。ただし未納より圧倒的にマシ」、後者は「今すぐ申請すべき」です。日本年金機構が公式サイトに載せている表と、令和8年度の数字で確認します。
- 全額免除でも、老齢基礎年金は満額の2分の1が反映される。未納はゼロ
- 免除期間は障害基礎年金・遺族基礎年金の納付済期間にカウントされる。未納はされない
- 「免除」と「納付猶予」は別物。猶予は年金額に反映されない
- 40年すべて全額免除だと年423,650円。40年納付なら847,300円で、差は年423,650円
- 厚生年金に切り替えれば、そもそも国民年金保険料の納付義務がなくなる
まず「免除・猶予・未納」の差を公式の表で見る
日本年金機構は、免除・納付猶予・未納の違いを次の表で示しています。
| 老齢基礎年金の 受給資格期間への算入 | 老齢基礎年金の 年金額への反映 | 障害・遺族基礎年金の 受給資格期間への算入 | |
|---|---|---|---|
| 納付 | あり | あり | あり |
| 全額免除 | あり | あり | あり |
| 一部免除 | あり | あり | あり |
| 納付猶予 | あり | なし | あり |
| 未納 | なし | なし | なし |
見てのとおり、未納だけが3つすべて「なし」です。免除は3つとも「あり」で、納付と同じ扱いを受ける項目もあります。
つまり「免除はしない方がいい」が成り立つのは、払えるのに免除申請をしようとしている場合だけです。払えない人にとっての選択肢は「免除か未納か」であって、その勝負は表を見れば一目で決まります。

あれ、「納付猶予」だけ年金額が「なし」になってますね。免除と同じものだと思ってました。
そこが一番の落とし穴です。猶予は「あとで払ってね」という先送りなので、追納しなければ年金額はゼロのままです。免除とは別物だと思ってください。
「免除」と「納付猶予」は別物
混同されがちですが、この2つは審査対象も効果も違います。
- 保険料免除: 本人・配偶者・世帯主の前年所得が一定額以下、または失業等の場合。 承認されれば年金額に反映される
- 納付猶予: 20歳以上50歳未満で、本人・配偶者の前年所得が一定額以下の場合。 受給資格期間にはカウントされるが年金額には反映されない
納付猶予は世帯主の所得を見ません。実家暮らしで親に収入があると免除は通らないが猶予なら通る、というケースがあるのはこのためです。
ただし猶予は年金額に反映されないので、追納して初めて意味を持ちます。「猶予が通ったから安心」で放置すると、未納ほどではないにせよ、老後の年金額は減ったままになります。
実家暮らしだと免除が通らないって聞いたことがあります。
免除は世帯主の所得も審査するからです。親に収入があると通りにくい。ただ猶予は本人と配偶者だけなので、そちらなら通ることがあります。50歳未満という条件はありますが。
免除すると、年金はいくら減るのか
減る量は免除の度合いで決まっています。令和8年度の数字です。国民年金保険料は月17,920円です。
| 区分 | 納める保険料(月) | 年金額への反映 |
|---|---|---|
| 全額納付 | 17,920円 | 満額(8分の8) |
| 4分の1免除 | 13,440円 | 8分の7 |
| 半額免除 | 8,960円 | 8分の6 |
| 4分の3免除 | 4,480円 | 8分の5 |
| 全額免除 | 0円 | 2分の1 |
| 納付猶予 | 0円 | なし |
| 未納 | 0円 | なし |
金額に直すと、公式が示している目安はこうです(昭和31年4月2日以後生まれ)。
- 40年すべて納付した場合: 年847,300円
- 40年すべて全額免除だった場合: 年423,650円(国庫負担2分の1で算出)
差は年423,650円。これが「免除すると年金が減る」の実体です。減るのは事実で、そこを否定する必要はありません。
ただし比べる相手が違います。未納なら、この423,650円すら受け取れません。40年払わずに未納だった場合、老齢基礎年金はゼロです。
年40万円の差はきついですね…。でも払えないものは払えないですし。
だから免除でいいんです。しかも10年以内なら追納できます。今は免除で受け皿を作っておいて、余裕が出た年にまとめて払う。これができるのが免除と猶予の強みです。
追納できるなら、とりあえず免除にしておけば損はしないですね。
そのとおりです。ただ免除で守れるのは老後の年金だけではありません。むしろ効いてくるのはこの先の話で、こちらのほうが金額も大きいんです。
本当に怖いのは、老後の話ではない
免除の議論はどうしても老齢年金に寄りますが、実害が出やすいのは障害基礎年金と遺族基礎年金のほうです。
公式には、未納のままにしておくと次のような場合に支給されないと明記されています。
- 障害は「初診日の属する月」、死亡は「死亡日の属する月」の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間(免除期間を含む)が3分の2未満の場合
- 「初診日の属する月」または「死亡日の属する月」の前々月までの1年間に保険料の未納がある場合
※ 不慮の事故や病気が発生してから、過去にさかのぼって申請しても納付要件には算入されません。
ここで重要なのは括弧書きの「免除期間を含む」です。免除を受けていた期間は、納付済期間としてカウントされます。未納はされません。
そしてさかのぼれない。病気になってから慌てて免除申請しても、その分は納付要件に入りません。障害基礎年金は1級で年1,059,125円、2級で年847,300円です。免除申請という紙1枚を出していたかどうかで、ここが変わります。
フリーランスに傷病手当金が無い話は フリーランスが病気で働けなくなったら?傷病手当金・障害年金で約500万円の差 に書きましたが、その障害年金すら未納だと消えるというのがこの論点です。
免除申請せずに、そのまま払わなかったらどうなるんですか?督促とか来るんでしょうか。
来ます。しかも督促状も差押えも、あなただけに来るわけではありません。世帯主と配偶者にも行きます。年金機構が5段階で公開しています。
払わずに放置すると、どうなるのか
ここまでは「免除は未納よりマシ」という話でしたが、未納を続けた場合に実際に何が起こるのかも公開されています。日本年金機構「日本年金機構の取り組み(国民年金保険料の強制徴収)」の記載です。
まず前提として、納付期限は納付対象月の翌月末日です。そして重要なのがここ。
国民年金第1号被保険者は国民年金保険料を納付する義務があります。
また、国民年金第1号被保険者の世帯主および配偶者は国民年金保険料を連帯して納付する義務があります。
未納は自分だけの問題ではありません。世帯主と配偶者が連帯して納付義務を負います。国民健康保険が世帯主に課税されるのと同じ構造が、年金にもあります(国保のほうは 国民健康保険はいつまで払う?75歳で自動的に終わる にまとめました)。
そのうえで、公式が示している流れは5段階です。
| 段階 | 何が起きるか |
|---|---|
| 1. 納付勧奨 | 期限までに納付されないと案内が来る。機構職員のほか、電話・文書による案内は民間事業者に委託されている |
| 2. 最終催告状 | 「支払う能力をお持ちでありながら」たび重なる勧奨でも納付されない場合に送付 |
| 3. 督促状 | 最終催告状の指定期限までに納付されない場合。⚠ 連帯納付義務者(世帯主および配偶者)にも送付される |
| 4. 財産の差押え | 督促状の指定期限までに納付されない場合。⚠ 連帯納付義務者の財産も差し押さえられる |
| 5. 延滞金 | 督促状の指定期限までに納付されない場合に発生 |
注目してほしいのは2段階目の条件です。公式は「国民年金保険料を支払う能力をお持ちでありながら」と書いています。
つまり強制徴収の対象は、払えるのに払わない人です。本当に払えないなら、免除を申請すればこの流れには乗りません。
未納を放置する理由が「手続きが面倒だから」なのだとしたら、免除申請の紙1枚のほうが圧倒的に安く済みます。督促状が世帯主と配偶者に届き、家族の財産まで差し押さえの対象になることを考えれば、比較にもなりません。
追納は10年以内。ただし3年度目から加算が乗る
免除・納付猶予を受けた期間は、10年以内なら追納できます。ただし条件があります。
承認を受けた期間の翌年度から起算して3年度目以降に追納する場合、当時の保険料額に経過期間に応じた加算額が上乗せされます。
令和8年度中に追納する場合の月額(全額免除・納付猶予・学生納付特例)を公式から引くと、次のとおりです。
| 免除を受けた年度 | 令和8年度中に追納する額(月) |
|---|---|
| 令和7年度分 | 17,510円(加算なし) |
| 令和6年度分 | 16,980円(加算なし) |
| 令和5年度分 | 16,770円 |
| 令和4年度分 | 16,990円 |
| 令和3年度分 | 17,110円 |
| 令和2年度分 | 17,070円 |
| 平成28年度分 | 16,850円 |
直近2年度分には加算がなく、古い年度ほど加算が乗る構造です。追納するなら、新しい年度から順に、余裕が出たタイミングで早めにということになります。
追納が損か得かの計算は 国民年金の追納は損か得か|社会保険料控除を入れると回収は8.4年に縮む でしています。
免除期間も「納付済期間」に入るんですね。それは知りませんでした。
ここが未納との決定的な差です。しかも、あとからさかのぼって申請しても納付要件には入りません。だから「払えないと分かった時点で出す」が鉄則になります。
申請できる期間には期限がある
免除・猶予の申請ができるのは、保険料の納付期限から2年を経過していない期間(申請時点から2年1か月前までの期間)です。
「そのうち申請しよう」と置いておくと、古い月から順に申請できなくなります。払えないと分かった時点で申請するのが正解です。
なお、次の方はこの制度の対象外で、別の制度になります。
- 学生 → 学生納付特例
- 生活保護の生活扶助を受けている方、障害年金を受けている方 → 法定免除
- 出産を予定している方・出産した方 → 産前産後期間の免除
また一部免除(4分の3・半額・4分の1)は、減額された保険料を納付している必要があります。承認を受けても払わなければ未納扱いになるので、ここは注意してください。
とりあえず免除申請します。でも、ずっと免除のままだと年金は減りっぱなしですよね…
そこです。免除は「減らして耐える」手段なので、出口が要ります。僕は厚生年金に切り替えたので、いまは国民年金の保険料を払っていません。
免除は「耐える」手段。出口を先に決めておく
ここまで整理したとおり、免除は未納より圧倒的に有利です。ただし免除そのものは状況を改善しません。今の負担は減りますが、将来の年金も減ります。追納しなければその差は残ります。
個人事業主にとっての出口は、大きく3つです。
- 収入が戻ったら追納する(10年以内・古い年度ほど加算が乗る)
- 付加年金や国民年金基金、小規模企業共済で上乗せする(免除中は付加保険料を納付できません)
- 厚生年金に切り替える(国民年金保険料の納付義務そのものがなくなる)
3つ目は見落とされがちです。厚生年金の被保険者になると国民年金の第2号被保険者になるため、月17,920円の国民年金保険料を払う必要がなくなります。しかも将来受け取るのは基礎年金に厚生年金が上乗せされた額になります。
免除が「減らして耐える」なら、こちらは「払わずに増やす」という方向です。個人事業主が厚生年金に入る方法は フリーランスが厚生年金に加入する3つの方法|将来の年金シミュレーション付き にまとめています。
国民健康保険料のほうも高くて苦しいなら、国保が高すぎる!年収別シミュレーション&保険料を安くする7つの方法 と併せて読んでください。年金と健康保険は同時に解決できる場合があります。
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よくある質問
Q1. 結局、免除はしない方がいいのですか?
払えるなら納付、払えないなら免除です。「しない方がいい」が当てはまるのは、払えるのに免除を狙う場合だけ。払えない状況で免除申請をしなければ未納になり、老齢基礎年金の受給資格期間・年金額・障害遺族年金の資格の3つすべてを失います。
Q2. 全額免除だと年金はいくらになりますか?
全額納付した場合の2分の1が反映されます。40年すべて全額免除だった場合の目安は年423,650円(40年納付なら847,300円)。国庫負担分の2分の1が入るためで、未納だとこの分も受け取れません。
Q3. 「納付猶予」でも年金は減りませんか?
減ります。納付猶予は受給資格期間にはカウントされますが、年金額には反映されません。免除とは別物です。追納して初めて年金額に反映されるので、猶予が通ったあとも放置しないでください。
Q4. あとから追納できますか?
免除・納付猶予を受けた期間は10年以内なら追納できます。ただし承認を受けた期間の翌年度から起算して3年度目以降は加算額が上乗せされます。令和8年度中に追納する場合、令和7年度分(17,510円)と令和6年度分(16,980円)には加算がありません。
Q5. 一部免除が承認されました。何もしなくていいですか?
いいえ。一部免除(4分の3・半額・4分の1)は、減額された保険料を納付する必要があります。令和8年度なら4分の3免除で月4,480円、半額免除で8,960円、4分の1免除で13,440円。払わなければ未納扱いになります。
Q6. いつまでに申請すればいいですか?
保険料の納付期限から2年を経過していない期間(申請時点から2年1か月前までの期間)が申請できます。置いておくと古い月から順に申請できなくなるので、払えないと分かった時点で申請してください。
まとめ
「国民年金の免除はしない方がいい」は、比べる相手を間違えた話です。日本年金機構の公式表では、免除は3項目すべて「あり」、未納は3項目すべて「なし」。払えない人にとって、免除は最善の選択です。
減るのは事実で、40年すべて全額免除なら年423,650円(40年納付は847,300円)。差は年423,650円あります。ただし未納ならその423,650円もありません。そして障害基礎年金・遺族基礎年金は、免除期間を納付済期間に含めてカウントします。さかのぼれないので、紙1枚の差が後で効いてきます。
そのうえで、免除は「減らして耐える」手段です。出口を決めずに続けると年金は減ったままになります。追納・上乗せ・厚生年金への切り替えのどれを選ぶかを、免除申請と同時に考えておいてください。
※ この記事の数値は2026年8月29日時点で日本年金機構の公式サイトに掲載されている令和8年度のものです。免除の所得基準額は世帯構成により異なるため、具体的な判定はお近くの年金事務所または市区町村の国民年金窓口にご確認ください。



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