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フリーランスや個人事業主として働くうえで、最も恐ろしいリスクのひとつが「病気やケガで働けなくなること」です。
会社員なら健康保険から傷病手当金が支給され、給与の約2/3を最長1年6ヶ月受け取れます。しかし、国民健康保険にはこの制度がないため、フリーランスは収入ゼロになるリスクと常に隣り合わせです。
本記事では、傷病手当金の仕組みと、もらえないケース、フリーランスが病気やケガに備えるための方法を解説します。フリーランスの備えは、民間の所得補償保険・就業不能保険、共済、貯蓄が中心です。会社の健康保険に入れるのは、法人化して役員報酬を受けるなど限られた場面です。
✅ この記事でわかること
- 傷病手当金とは何か、会社員はいくら受け取れるのか
- なぜフリーランスは傷病手当金をもらえないのか
- フリーランスが病気やケガに備える5つの具体的方法
- 社会保険に加入すれば傷病手当金が使える仕組み
- 保険料を払っても社保のほうが得なケースとシミュレーション
結論:国保には傷病手当金がない。備えは保険と貯蓄で
傷病手当金って、フリーランスには関係ない制度ですよね?
残念ながら、フリーランスが入る国民健康保険には、原則として傷病手当金がありません。働けない間の収入は、民間の保険や貯蓄で自分で備える必要があるんです。
💡 結論
国保には原則として傷病手当金がないため、休業中の収入は民間の所得補償保険・共済・貯蓄で備えます。会社の健康保険に入れるのは、法人化して役員報酬を受ける場合など限られた場面です。
| 方法 | 傷病手当金 | コスト | おすすめ度 |
|---|---|---|---|
| 民間の所得補償保険 | 契約額(10万円など) | 月額5千円〜2万円 | ★★★☆☆ |
| 共済(県民共済など) | 入院日額5千円など | 月額2千円〜 | ★★★☆☆ |
| 小規模企業共済の貸付 | 自分の積立から借入 | 積立額次第 | ★★☆☆☆ |
| 貯蓄(生活防衛資金) | なし(自己資金) | 生活費6ヶ月分 | ★★★☆☆ |
傷病手当金とは?会社員なら給与の2/3が最長1年6ヶ月支給される
そもそも傷病手当金って、どんな制度なんですか?
病気やケガで仕事を休んだときに、健康保険から給与の約2/3が支給される制度です。会社員が加入する健康保険(協会けんぽや組合健保)の給付のひとつですね。
傷病手当金の支給条件
傷病手当金を受け取るには、以下の4つの条件をすべて満たす必要があります。
- 業務外の病気やケガで療養中であること
業務上の病気やケガは労災保険の対象となるため、傷病手当金は対象外です。 - 仕事に就けない状態であること
医師の診断書が必要です。 - 連続して3日間休んだ後、4日目以降も休んでいること
最初の3日間は「待期期間」として支給されず、4日目から支給開始となります。 - 休んだ期間、給与の支払いがないこと
給与が一部支払われている場合、傷病手当金との差額が支給されます。
支給額と支給期間
- 支給額:標準報酬日額の3分の2
例:月給30万円の場合、日額約6,700円×休んだ日数 - 支給期間:支給開始日から最長1年6ヶ月
2022年1月の法改正により、通算1年6ヶ月まで受け取れるようになりました(以前は暦日で1年6ヶ月)。
📝 2022年の法改正ポイント
2022年1月1日以降に支給開始となった傷病手当金は、通算1年6ヶ月まで支給されます。これにより、途中で仕事に復帰した後、再度休業した場合でも、支給期間内であれば再度受給できるようになりました。
なぜフリーランスは傷病手当金がもらえないのか
どうしてフリーランスは傷病手当金を受け取れないんですか?
フリーランスや個人事業主は、国民健康保険に加入しています。国保には傷病手当金の制度がないため、病気やケガで働けなくなっても給付金は受け取れません。
国民健康保険と健康保険(社保)の違い
| 項目 | 国民健康保険(国保) | 健康保険(社保) |
|---|---|---|
| 加入者 | フリーランス、個人事業主、無職など | 会社員、公務員など |
| 傷病手当金 | なし | あり(給与の2/3、最長1年6ヶ月) |
| 出産手当金 | なし | あり(産前42日+産後56日分) |
| 扶養制度 | なし | あり(配偶者や子を無料で扶養可) |
| 高額療養費の付加給付 | なし | あり(組合により) |
⚠️ フリーランスのリスク
国保には傷病手当金がないため、病気やケガで働けなくなると即座に収入ゼロになります。入院費や生活費を自己資金で賄う必要があり、貯蓄がなければ生活が破綻するリスクがあります。
例外:一部の国保で任意給付がある場合も
国保の多くには傷病手当金がありませんが、国保組合(医師国保、建設国保など)では、独自に傷病手当金を設けているケースがあります。ただし、フリーランス全般が加入できるわけではなく、特定の業種に限られます。
傷病手当金がもらえないケース
会社員や社会保険に入っている人でも、次のどれかに当てはまると傷病手当金は出ません(協会けんぽ「傷病手当金」)。
- 仕事中・通勤中のケガや病気:労災保険の対象になるため、健康保険の傷病手当金は出ません。美容整形など病気と見なされないものも対象外です
- 仕事ができる状態:「仕事に就くことができない」ことが条件です。医師などの意見と仕事の内容をもとに判断されます
- 連続3日休んでいない:連続する3日間(待期)のあと、4日目から支給されます。2日休んで3日目に働くと、待期は成立しません
- 休んでいる間も給与が出ている:給与が支払われている間は出ません。給与が傷病手当金より少なければ、差額が出ます
- 任意継続中に発生した病気・ケガ:任意継続被保険者の期間中に発生したものには支給されません
- 退職後の継続給付の条件を満たさない:退職日までに継続して1年以上の被保険者期間(任意継続や国保の期間は除く)があり、退職日に受けているか受けられる状態であることが必要です。いったん働ける状態になると、その後また働けなくなっても出ません
- 国民健康保険に入っている:国民健康保険法58条2項は、市区町村が「条例…の定めるところにより、傷病手当金の支給…を行うことができる」としていて、任意の給付です。フリーランス・個人事業主が入る市区町村の国保には、この制度がないのが一般的です
支給される場合の期間は支給開始日から通算1年6か月、1日あたりの額は直近12か月の標準報酬月額の平均の30分の1の3分の2です。
フリーランスが病気やケガに備える5つの方法
じゃあ、フリーランスはどうやって備えればいいんですか?
代表的な方法は5つあります。それぞれメリット・デメリットを見ていきましょう。
1. 民間の所得補償保険(就業不能保険)
所得補償保険は、病気やケガで働けなくなった場合に、毎月一定額(例:10万円)が支給される民間保険です。
メリット:
- 月額10万円など、契約額を自由に設定できる
- 長期療養にも対応(最長60歳や65歳まで)
- 精神疾患に対応した商品もある
デメリット:
- 保険料が高い(月額5千円〜2万円)
- 免責期間がある(60日や180日など、すぐには支給されない)
- 保険料が掛け捨て
2. 共済(県民共済、コープ共済など)
共済は、組合員同士で助け合う非営利の保障制度です。病気やケガで入院した場合に日額5千円などが支給されます。
メリット:
- 保険料が安い(月額2千円程度)
- 掛け捨てだが、割戻金がある場合も
- 手続きが簡単
デメリット:
- 保障額が少ない(入院日額5千円など)
- 長期療養には不十分
- 高齢になると保障額が減る
3. 小規模企業共済の貸付制度
小規模企業共済は、個人事業主向けの退職金制度ですが、加入者は積立金の範囲内で低利で借入できる貸付制度があります。
メリット:
- 年利1.5%程度で借入可能
- 審査がゆるい(自分の積立金が担保)
- 掛金が全額所得控除になる
デメリット:
- 積立額が少ないと借入額も少ない
- あくまで「借金」なので返済が必要
- 病気やケガの「保障」ではない
4. 貯蓄(生活防衛資金6ヶ月分)
最もシンプルな方法は、生活費の6ヶ月分を貯蓄することです。
メリット:
- 保険料がかからない
- 自由に使える
- 利息がつく(わずかだが)
デメリット:
- 貯蓄に時間がかかる
- 長期療養には不十分(1年以上働けない場合など)
- 使えば無くなる
会社の健康保険にあって国保にない保障
傷病手当金以外にも、社保に入るメリットってあるんですか?
たくさんあります。傷病手当金以外にも、出産手当金、高額療養費の付加給付、厚生年金、扶養制度など、国保にはない保障が盛りだくさんです。
社会保険(健康保険)の主な給付
| 給付名 | 内容 | 国保との違い |
|---|---|---|
| 傷病手当金 | 病気やケガで休業時、給与の2/3を最長1年6ヶ月支給 | 国保:なし |
| 出産手当金 | 産前42日+産後56日の計98日分、給与の2/3を支給 | 国保:なし |
| 高額療養費の付加給付 | 自己負担上限を超えた医療費を組合が独自に追加給付 | 国保:なし |
| 扶養制度 | 配偶者や子(年収130万円未満)を保険料無料で扶養可 | 国保:なし(全員分の保険料が必要) |
| 厚生年金 | 将来の年金額が増える(国民年金+厚生年金の2階建て) | 国保:国民年金のみ |
✅ 社保加入のメリットまとめ
- 傷病手当金で病気やケガのリスクをカバー
- 出産手当金で産前産後の収入をカバー
- 高額療養費の付加給付で医療費負担を軽減
- 厚生年金で将来の年金額を増やせる
- 扶養制度で家族の保険料を節約できる
国保と社保の負担と保障の比較(参考)
社保って保険料が高いイメージがあるんですが、本当に得なんですか?
具体的にシミュレーションしてみましょう。実は、国保+民間保険よりも、社保のほうがトータルで安くなるケースが多いんです。
ケース1:単身フリーランス(年収400万円)
| 項目 | 国保+民間保険 |
|---|---|
| 国保料 | 月額約3万円 |
| 国民年金 | 月額1万7,920円 |
| 所得補償保険 | 月額1万円 |
| 社保料(健保+厚生年金) | — |
| 合計 | 月額約5万7千円 |
結論:社保のほうが月7千円安いうえに、傷病手当金・出産手当金・厚生年金がつく。
ケース2:扶養家族がいる場合(配偶者+子1人)
| 項目 | 国保+民間保険 |
|---|---|
| 国保料(3人分) | 月額約5万円 |
| 国民年金(2人分) | 月額3万3,960円 |
| 所得補償保険 | 月額1万円 |
| 社保料(健保+厚生年金) | — |
| 合計 | 月額約9万4千円 |
結論:社保のほうが月4万4千円も安い。扶養家族がいる場合は圧倒的にお得。
💡 社保加入がお得な理由
社保の保険料は高いが、国保+国民年金+民間保険のトータルコストと比べると実は安いケースが多い。
さらに、傷病手当金・出産手当金・厚生年金・扶養制度といった国保にはない保障がついてくるため、コストパフォーマンスは圧倒的に社保のほうが高いと言えます。
⚠️ ただし注意点も
個人事業主の社保加入デメリット5つでも解説していますが、社保加入には保険料の上昇や手続きの手間といったデメリットもあります。収入が低い場合(年収200万円以下など)は、国保のほうが安くなるケースもあるため、シミュレーションが必要です。
今の選択肢(2026年10月時点)
2026年9月14日の通知で、役員型だけでなく正社員型・従業員型の加入サービスも、会費が報酬を上回る・勤務が形だけといった場合は資格を認めない考え方が示されました。サービスに頼らない選択肢は次のとおりです。
- 国保+国民年金のまま負担を下げる:経費と青色申告特別控除で事業所得を正しく下げる、軽減・減免を確認する(国保の減免・軽減制度)
- 国保組合:業種が合えば定額(業種別の国保組合一覧)
- 法人化:自分の会社で社保に入る(法人化で税金と社会保険料はどう変わるか)
- 雇用されて加入要件を満たす:実際に働く会社で社保に入る
会社員の社保と国保の損得は社会保険と国民健康保険どっちが得?、加入前に確かめる5つの質問はこちらにまとめています。
よくある質問(FAQ)
Q1. フリーランスは傷病手当金を一切もらえないのですか?
Q2. 傷病手当金はいくらもらえますか?
標準報酬日額の3分の2が支給されます。例えば、月給30万円の場合、日額約6,700円×休んだ日数が支給されます。最長1年6ヶ月まで受け取れます(2022年の法改正により通算1年6ヶ月に変更)。
Q3. 社会保険に加入するにはどうすればいいですか?
Q5. 民間の所得補償保険と社保、どちらがおすすめですか?
社会保険のほうが総合的にお得です。傷病手当金だけでなく、厚生年金・出産手当金・扶養制度など、国保にはない保障が多数ついてきます。民間保険は保険料が掛け捨てですが、社保は将来の年金にもつながります。ただし、収入が低い場合は国保のほうが安いケースもあるため、シミュレーションが必要です。
まとめ:国保には傷病手当金がない。働けない期間への備えを
- フリーランス・個人事業主が入る国民健康保険には、原則として傷病手当金がありません(国民健康保険法58条2項で市区町村の任意の給付とされています)
- 会社員の健康保険でも、仕事中のケガ、連続3日休んでいない、給与が出ている、任意継続中に発生した、などの場合は出ません
- フリーランスの備えは、民間の所得補償保険・就業不能保険、共済、生活費6か月分程度の貯蓄が中心です
- 会社の健康保険に入れるのは、法人化して役員報酬を受けるなど限られた場面です。2026年9月14日の厚生労働省の通知で、会費を払って従業員として加入する形は判定の対象になりました(「個人事業主が入れる社会保険」は怪しい?違法?)



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