最終更新日:2026年8月2日
社会保険に入れるサービスを検討してるんですが、これって失業保険ももらえるようになるんですか?
いいえ、そこははっきり「いいえ」です。社会保険(健康保険+厚生年金)と雇用保険は別の制度なので、切り分けて理解しておかないと、いざというときに困ります。
フリーランス・個人事業主が「働けなくなったとき」「仕事がなくなったとき」の備えを考えるうえで、最初に押さえるべきなのが「その給付は、どの保険から出るのか」です。
健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険は、名前が似ていても全く別の制度。社会保険に加入すれば手厚くなる給付もあれば、加入しても一切もらえない給付もあります。この記事では後者、つまり「雇用保険から出る給付は対象外」という境界線を、制度の根拠つきで整理します。
✅ 先に結論
- 個人事業主本人は雇用保険に加入できない(労働者ではないため)
- 社保加入サービスで健康保険・厚生年金に入っても、雇用保険は対象外(週20時間の要件を満たさない)
- したがって失業給付・育児休業給付金・教育訓練給付は受け取れない
- 代わりに使えるのは①求職者支援制度(月10万円)②労災の特別加入 ③小規模企業共済の3つ
そもそもフリーランスに「失業保険」は存在しない
会社員のときは失業保険がありましたけど、独立したらどうなるんですか?
制度そのものが使えなくなります。理由は3つあります。
いわゆる「失業保険」=雇用保険の基本手当は、雇用されている労働者のための制度です。フリーランス・個人事業主が受け取れない理由は次の3点に整理できます。
理由1:個人事業主は「労働者」ではない
雇用保険は「雇用される労働者」を対象とする制度です。自ら事業を営む個人事業主は、誰かに雇用されている立場ではないため、そもそも被保険者になれません。従業員を雇っている場合も、雇うのは事業主側なので、事業主本人は対象外です。
理由2:受給には「失業の状態」が必要
基本手当の受給要件は、離職したうえで「就職しようとする積極的な意思といつでも就職できる能力があるにもかかわらず、職業に就くことができない状態」にあること。事業を続けている限り、この「失業の状態」には該当しません。会社員時代に加入していた期間があっても、独立後に事業を営みながら受け取ることはできません。
理由3:社保加入サービスを使っても解決しない
「従業員として雇用されるなら雇用保険も付くのでは?」と考える方は多いのですが、ここが最大の誤解ポイントです。次章で詳しく説明します。
社保に入れるのに雇用保険には入れない、制度上の理由
健康保険と厚生年金には入れるのに、雇用保険だけダメなのはなぜですか?
加入要件の「ものさし」が違うからです。社会保険は働き方の実態で判断されますが、雇用保険は週の所定労働時間という明確な線引きがあります。
雇用保険の被保険者となる要件は、次のとおりです(学生は原則除く)。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 所定労働時間 | 1週間の所定労働時間が20時間以上であること |
| 雇用見込み | 31日以上の雇用見込みがあること |
社保加入サービスの多くは月10時間程度の勤務を前提としています。月10時間は週あたり約2.3時間ですから、週20時間の要件には遠く届きません。だから健康保険・厚生年金には加入できても、雇用保険には加入しない——これが制度上の答えです。
実際、ソロコンシェルジュの公式情報でも「雇用保険には加入しない」「育児休業給付金・失業給付は受け取れない」と明記されています。加入を検討する際は、ここを曖昧にしているサービスがあれば注意が必要です。
📝 2028年10月の法改正でも変わらない見込み
2024年5月に成立した改正雇用保険法により、2028年10月1日から加入要件が「週10時間以上」に引き下げられます(新たに約500万人が対象になる見込み)。ただし月10時間勤務は週約2.3時間のため、この拡大後も要件を満たさないと考えられます。制度の詳細は施行までに示される可能性があるため、最新情報はハローワーク等でご確認ください。
【一覧表】その給付は、どの保険から出るのか
結局、何がもらえて何がもらえないのか混乱してきました…
保険の種類ごとに整理すると一目でわかりますよ。「雇用保険」の行がすべて対象外、これが今日の要点です。
| 給付・保障 | どの保険から出るか | 社保加入サービス利用時 |
|---|---|---|
| 医療費3割・高額療養費 | 健康保険 | ○ 対象 |
| 傷病手当金 | 健康保険 | ○ 対象(国保にはない給付) |
| 出産育児一時金(50万円) | 健康保険・国保どちらも | ○ 対象 |
| 出産手当金 | 健康保険 | △ 標準報酬が最低等級のため少額。公式の保障一覧には未記載のため、加入前に個別確認を |
| 老齢厚生年金の上乗せ | 厚生年金 | ○ 対象 |
| 障害年金・遺族年金の上乗せ | 厚生年金 | ○ 対象(手厚くなる) |
| 失業給付(基本手当) | 雇用保険 | ✕ 対象外 |
| 育児休業給付金 | 雇用保険 | ✕ 対象外 |
| 出生時育児休業給付金 | 雇用保険 | ✕ 対象外 |
| 教育訓練給付 | 雇用保険 | ✕ 対象外 |
| 労災(療養・休業補償) | 労災保険 | ✕ 対象外(別途、特別加入で備える) |
「社会保険に入れる=会社員と同じ保障がすべて手に入る」ではありません。健康保険と厚生年金の範囲だけが手厚くなる——この理解が正確です。傷病手当金や障害年金の詳細は病気で働けなくなったときの完全ガイド、出産まわりは出産手当金・育休と社会保険の全知識で解説しています。
代わりに使える3つの備え
もらえないのはわかりました。でも、何もないのは不安です…
雇用保険の代わりになる制度は、ちゃんとあります。順に見ていきましょう。
備え1:求職者支援制度(月10万円の給付金)
雇用保険を受けられない人のための制度です。無料の職業訓練を受けながら、月10万円の職業訓練受講給付金と通所手当を受け取れます。廃業して再就職を目指す場合の、実質的なセーフティネットになります。
| 主な支給要件 | 内容 |
|---|---|
| 本人収入 | 月8万円以下 |
| 世帯収入 | 世帯全体で月25万円以下 |
| 金融資産 | 世帯全体で300万円以下 |
| 不動産 | 現在住んでいる所以外に土地・建物を所有していない |
| 出席 | 訓練実施日すべてに出席(やむを得ない理由の欠席は2割まで) |
厚生労働省の実績では、令和6年度に求職者支援訓練を受講した方は全国で38,945人、実践コースの就職率は62.4%でした。要件は改正されることがあるため、利用を検討する際はハローワークで最新の条件をご確認ください。
備え2:労災保険の特別加入(2024年11月から全業種に拡大)
労災保険も雇用保険と同じく「労働者」のための制度ですが、フリーランスには特別加入という例外の枠があります。2024年11月1日の改正で「特定フリーランス事業」が新設され、企業から業務委託を受けて働く全業種のフリーランスが対象になりました。
保険料は全額自己負担で、給付基礎日額(3,500円〜25,000円の16段階)から選んで決まります。加入は労働局が認可した特別加入団体を通じて行います。詳しくは労災保険・特別加入ガイドをご覧ください。
備え3:小規模企業共済(廃業時の「退職金」)
掛金は月1,000円から設定でき、全額が所得控除の対象。廃業したときに共済金を受け取れるため、失業給付の代わりとして機能します。ただし掛金のほうが節税額より大きいため今の手取りは減り、資金は原則として廃業・退職時まで動かせません。「今の手取りを増やす施策」ではなく「将来に備える施策」として位置づけてください。
なお、社保加入サービスに加入した後は新規加入ができない可能性があるため、検討している方は加入前に手続きしておくのが安全です。詳細はiDeCo×小規模企業共済 徹底比較で解説しています。
💡 民間保険という選択肢も
就業不能保険・所得補償保険は、病気やケガで働けなくなったときの収入減を補う民間の商品です。公的制度で埋まらない部分をカバーする位置づけですが、保険料と保障内容は商品ごとに大きく異なります。まず公的制度(傷病手当金・障害年金・労災特別加入)で何がカバーされるかを確認したうえで、不足分を検討するのが順序として合理的です。
では、社保切替で「増える保障」は何か
雇用保険がダメなら、社保に切り替える意味は薄いんでしょうか?
いいえ、増える部分ははっきりあります。ただし正確に理解したうえで判断してほしいんです。
国民健康保険+国民年金から、健康保険+厚生年金に切り替えると、次の3点が変わります。
- 傷病手当金:国保には原則ない給付。病気やケガで働けない期間、標準報酬日額の3分の2が最長1年6ヶ月(通算)支給されます。※標準報酬月額が最低等級の場合、受給額も少額になります
- 障害年金・遺族年金の上乗せ:厚生年金部分が加わることで、国民年金のみの場合より手厚くなります
- 家族の扶養:健康保険では扶養家族の人数が増えても保険料は変わりません(国保は加入人数分の均等割が加算)
保険料の削減額とあわせて考えると、切替が合理的になるかは所得と家族構成次第です。ご自身の数字は国保vs社保シミュレーターで確認できます。なお、所得が低い時期に無理に加入する必要はありません。判断材料が揃ってから検討すれば十分です。
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よくある質問
Q1. 会社員時代に払った雇用保険料は無駄になりますか?
独立後すぐに事業を始めた場合、基本手当は受け取れません。ただし被保険者であった期間は、将来ふたたび雇用される働き方に戻った際に通算される場合があります(一定の期間制限あり)。個別の判断はハローワークにご確認ください。
Q2. 廃業したら失業給付を受け取れますか?
廃業して求職活動を行う場合、過去の被保険者期間などの条件を満たせば受給できる可能性がありますが、独立から時間が経っていると受給資格が消滅している場合が一般的です。まずはハローワークで受給資格の有無を確認し、対象外であれば本記事で紹介した求職者支援制度を検討してください。
Q3. 社保加入サービスを使えば育児休業給付金はもらえますか?
受け取れません。育児休業給付金は雇用保険から支給される給付で、雇用保険の被保険者であり、実際に育児休業を取得して賃金が低下していることなどが要件です。社保加入サービスは雇用保険の対象外のため、この給付の対象になりません。
Q4. フリーランスが使える育児関係の制度はありますか?
国民年金の産前産後期間の保険料免除制度があり、さらに2026年10月からは育児期間中の国民年金保険料免除制度が始まります。詳しくは当サイトの育児期間免除制度の解説記事をご覧ください。
Q5. 雇用保険に入れるサービスはないのですか?
週20時間以上の所定労働時間で実際に雇用される働き方であれば、雇用保険の対象になり得ます。ただしそれは「フリーランスを続けながら社会保険料を抑える」という目的とは別の働き方です。目的と手段を分けて検討することをおすすめします。
Q6. 2028年の法改正で状況は変わりますか?
雇用保険の加入要件が週10時間以上に引き下げられますが、月10時間程度の勤務は週約2.3時間のため、引き続き要件を満たさないと考えられます。施行までに詳細が示される可能性があるため、最新情報の確認をおすすめします。
出典一覧
- 厚生労働省「雇用保険制度」(被保険者の要件・基本手当の受給要件) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/koyouhoken/index.html
- 厚生労働省「求職者支援制度のご案内」(職業訓練受講給付金 月10万円・支給要件) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyusyokusya_shien/index.html
- 厚生労働省「フリーランスの皆さまも特別加入により労災保険の補償を受けられます!」(2024年11月1日〜特定フリーランス事業) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/rousai/index.html
- 改正雇用保険法(2024年5月10日成立・2028年10月1日施行予定の適用拡大)
- 中小企業基盤整備機構「小規模企業共済」 https://www.smrj.go.jp/kyosai/skyosai/
- ソロコンシェルジュ公式note「社保には入れるのに雇用保険には入れない?」 https://note.com/solo_concierge/n/n88ead34e9d1d
まとめ|「どの保険から出るか」で考える
フリーランスに失業保険はありません。社会保険に加入できるサービスを使っても、雇用保険は対象外のままです。ここを誤解したまま加入すると、いざというときに「聞いていた話と違う」ということになりかねません。
大切なのは、給付を「どの保険から出るか」で分類して考えること。健康保険と厚生年金の範囲は社保切替で手厚くなり、雇用保険の範囲は対象外、労災は特別加入で自分から備える。この3層を分けて把握しておけば、必要な備えを過不足なく組み立てられます。
※本記事は2026年8月時点の制度に基づきます。制度・要件は改正される場合があるため、実際の手続き・判断はハローワーク、年金事務所、各制度の窓口でご確認ください。
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