最終更新日:2026年10月19日
「106万円の壁がなくなった」ってニュースで見たけど、フリーランスの僕にも関係あるの?
結論から言うと、撤廃の直接の対象は「雇われて働くパート・アルバイト」なんだ。でもフリーランスにも巡り巡って関係してくる。順番に整理しよう。
2025年6月に成立した年金制度改正法によって、社会保険(厚生年金・健康保険)の加入対象が段階的に広がっています。その第一弾として、2026年10月1日にいわゆる「106万円の壁」(月額8.8万円の賃金要件)が撤廃されました。このニュースはパートで働く人だけでなく、フリーランス・個人事業主にとっても「社会保険が当たり前になっていく流れ」として無視できません。この記事では、何が変わるのか、誰が対象なのか、そしてフリーランスが今できる備えまでを整理します。
✅ この記事でわかること
- 2026年10月の「106万円の壁」撤廃で何が変わるのか
- 撤廃の対象は誰か(フリーランス本人の本業は対象外)
- フリーランス・個人事業主にも関係してくる2つのケース
- 社会保険が当たり前になる時代に、フリーランスが今できる備え
⚠️ 注意
本記事は2026年10月19日に一次情報を取り直して確認した内容です(厚生労働省「社会保険の適用拡大について」/日本年金機構「保険料調整制度」チラシ/協会けんぽ 令和8年度保険料額表(東京))。記事中の金額は社会保険料だけの比較で、所得税・住民税は含みません。自治体・年齢・家族構成で変わります。
⚠️ 2026年9月25日 追記|9月14日に新しい厚生労働省通知が出ています
2026年9月14日、厚生労働省から保保発0914第2号・年管管発0914第2号が出ました(原文PDF)。2026年3月18日の通達(保保発0318第1号)が「法人の役員である個人事業主等」=役員型を対象にしていたのに対し、今回の通知は「法人の役員ではない労働者」=正社員型・従業員型が対象です。「役員ではなく従業員だから対象外」という整理は、この通知で変わりました。本記事のうち、従業員型を役員型より安全とする記述は、この通知より前の前提で書かれています。
通知が示した判定は2つ。① 事業所に支払う会費等が報酬を上回る(会費の名称は問わない。勉強費・広告費・掲載料・参加料・コンサルタント料・協力金・委託費など)。② 業務の実態が労働時間が常態的に極端に短い、または自己研さん・活動報告・会員同士の互助的な紹介・自分の事業をそのまま事業所の業務にしたものにとどまる。①②のいずれにも該当すれば原則として資格なし、どちらか一方なら個別具体的に判断、という建て付けです。
一方、通知に書かれていないこともあります。①「極端に短い」が週や月で何時間なのかという数値基準はありません。②既に加入している人の資格をいつ・どう扱うかの手続きもありません(3月通達にあった「資格喪失届を提出させ、資格を喪失させる」の一文が今回は無い)。③遡及や保険料の追徴についての記載もありません。「2年遡って請求される」という説明を見かけますが、これは保険料徴収の消滅時効(2年)からの運用の予測であって、通知の明文ではありません。④事業所への罰則の記載もありません。⑤特定のサービス名は一切登場しません。現時点では誰も断定できない、というのが正確な状態です。最終的に判断するのは保険者(協会けんぽ・健康保険組合・日本年金機構)です。
🎥 動画で解説:【10月1日から】週1時間増やすと手取り年17万円増|106万円の壁撤廃で国保の家庭だけ結論が逆になる【2026年10月】(約11分)
「106万円の壁」とは?2026年10月に何が変わるのか
そもそも106万円の壁って何だっけ?
パートで働く人が社会保険に入るかどうかの「賃金のライン」のことだよ。これが2026年10月1日になくなったんだ。
「106万円の壁」とは、短時間労働者が社会保険(厚生年金・健康保険)の加入対象になるかどうかを分ける賃金要件のことです。2026年9月までは「月額賃金8.8万円以上(年収にして約106万円)」という基準があり、これを下回ると加入対象外でした。2026年10月1日、この賃金要件は撤廃されました。いまは、勤め先が対象の企業(厚生年金の被保険者51人以上など)で週の所定労働時間が20時間以上なら、賃金の多少にかかわらず社会保険の加入対象になります。
| 項目 | 改正前 | 2026年10月以降 |
|---|---|---|
| 賃金要件 | 月8.8万円以上(約106万円) | 撤廃 |
| 労働時間 | 週20時間以上 | 週20時間以上(変更なし) |
| 対象 | 賃金ラインを超えた短時間労働者 | 週20時間以上なら賃金を問わず対象 |
✅ 2026年10月以降も「残る」加入要件
106万円(月額賃金8.8万円)の賃金要件は撤廃されました。いま短時間労働者が社会保険に加入するかどうかは、次の要件で判断されます。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 2ヶ月を超えて雇用される見込みがある
- 学生でないこと
- 勤務先の従業員数(2027年9月までは厚生年金の被保険者51人以上。この企業規模要件も2027年10月以降に段階的に縮小され、将来的な撤廃が予定されています)
つまり「賃金の壁」はなくなり、「週20時間以上働くかどうか」が実質的な判断基準に近づきました。
「106万円の壁」と「130万円の壁」はどう違う?
混同されやすい2つの「壁」ですが、意味する制度が異なります。
| 壁 | 意味 | 2026年10月改正での扱い |
|---|---|---|
| 106万円の壁 | パート・短時間労働者が「自分で社会保険に加入する」義務が生じる賃金ライン | 賃金要件が撤廃され、週20時間以上などの要件で判断へ |
| 130万円の壁 | 配偶者などの「扶養(被扶養者)でいられる」年収の上限 | 今回の改正では撤廃されず、引き続き残ります |
なお、週20時間以上働く方は130万円に届く前に社会保険の加入対象となるケースが多く、実務上は「106万円の壁(週20時間)」側の基準が先に効く場面が増えます。制度の詳細や数字は今後の改正で変わり得るため、最新情報をご確認ください。
さらに先の改正|企業規模要件の撤廃と個人事業所への拡大
変わるのは106万円の壁だけ?
いや、これは第一歩。もっと大きな「適用拡大」が段階的に続くんだ。
今回の改正では、賃金要件の撤廃に続いて、社会保険の加入対象がさらに広がっていく予定です。主な流れは次のとおりです。
📝 適用拡大の段階スケジュール(2027年10月以降は予定)
- 2026年10月:賃金要件(106万円の壁)を撤廃(実施済み)
- 2027年10月:36〜50人の事業所へ拡大
- 2029年10月:21〜35人の事業所へ拡大。あわせて従業員5人以上の個人事業所について、これまで対象外だった業種(17業種以外)も加入対象に拡大(既存の事業所は当分のあいだ対象外とされています)
- 2032年10月:11〜20人の事業所へ拡大
- 2035年10月:10人以下の事業所へ拡大(企業規模要件が撤廃される)
将来的には、勤務先の規模にかかわらず、週20時間以上働く短時間労働者は社会保険に加入する方向です。「社会保険は一部の人のもの」から「働く人みんなのもの」へと、制度の前提が変わりつつあると言えます。
勤め先が50人以下なら|2026年10月1日に始まった「保険料調整制度」
週20時間以上でも、勤め先の厚生年金の被保険者が常時50人以下なら、いまのところ加入対象ではありません。ただし労使が合意すれば「任意特定適用事業所」になって加入できます。その受け皿として、2026年10月1日から保険料調整制度が始まりました。
📝 保険料調整制度の対象(日本年金機構のチラシより)
対象になる事業所
2026年10月1日以降に任意特定適用事業所になった事業所(50人以下)。2026年9月30日以前に任意特定適用事業所になった事業所は対象外です。2027年10月以降に適用拡大で順次対象になる事業所も含まれます。
対象になる人(3つすべて)
① 週の所定労働時間が20時間以上(フルタイムの4分の3未満)/② 月収13万円未満(標準報酬月額12.6万円以下)/③ 学生ではない
内容は、制度の利用から通算3年間、本人が払う社会保険料を軽減するというものです。軽減分は事業主が一時的に負担しますが、あとで支払う保険料から全額控除されるので、最終的に事業主が納める保険料は増えません。本人が将来受け取る年金額にも影響しません。
| 月収(標準報酬月額) | 1・2年目の本人負担 | 3年目 |
|---|---|---|
| 9.3万円未満(8.8万円) | 25% | 37.5% |
| 9.3〜10.1万円未満(9.8万円) | 30% | 40% |
| 10.1〜10.7万円未満(10.4万円) | 36% | 43% |
| 10.7〜11.4万円未満(11万円) | 41% | 45.5% |
| 11.4〜12.2万円未満(11.8万円) | 45% | 47.5% |
| 12.2〜13万円未満(12.6万円) | 48% | 49% |
下の章で使う例(月収104,000円)に当てはめると、本人負担は月14,758円が月10,625円になります。年間では127,506円。雇用保険を足しても年133,746円で、国保と国民年金を自分で払っていたとき(年293,285円)の半分以下です。
⚠️ 手続きは事業主側が行い、期限と方法に注意
事業所が対象になった日から2年以内に「保険料調整開始申出書」を提出する必要があり、この申出書は電子申請ができません(郵送または窓口)。任意特定適用事業所になること自体には、同意対象者の2分の1以上の同意が要ります。「うちは50人以下だから関係ない」で止めず、勤め先に確認してみる価値があります。
撤廃の対象は誰?フリーランス本人の本業は対象外
で、結局フリーランスの僕は社保に入らされるの?
そこが大事なポイント。今回の撤廃は「雇われて働く人」の話で、独立して事業をしているフリーランスの本業の所得には、直接は適用されないんだ。
ここは誤解しやすいので、はっきり整理します。今回の「106万円の壁」撤廃や適用拡大は、勤め先に雇用されて働くパート・アルバイトなどの短時間労働者が対象です。独立して事業を営む個人事業主・フリーランスが、自分の事業所得について自動的に社会保険へ加入させられる、という話ではありません。フリーランスの本業は、引き続き国民健康保険・国民年金が基本です。
ただし、フリーランスにも巡り巡って関係してくるケースが2つあります。
💡 フリーランスにも関係する2つのケース
① 配偶者がパートで働いている場合
配偶者が週20時間以上で働き、勤め先が厚生年金の被保険者51人以上の企業などなら、2026年10月の賃金要件撤廃で年収にかかわらず社会保険の加入対象になります。国保の世帯にはもともと「扶養」が無いので、世帯の負担はむしろ下がります(後述のモデルで年109,954円減)。会社員の夫に扶養されている場合とは結論が逆になる点に注意してください。
② 自分が人を雇っている個人事業主の場合
2029年10月以降、従業員5人以上の個人事業所は対象業種が広がります。スタッフを雇っているサロン・店舗オーナーなどは、将来の社会保険加入義務を見据えた準備が必要になる場合があります。
国保の家庭は結論が逆になる|週1時間増やすと手取りが年17万円増える
「週20時間を超えると手取りが減る」という説明をよく見かけますが、これは夫(世帯主)が会社員で、妻が被扶養者でいられる家庭の話です。夫が国保の個人事業主なら、結論は逆になります。
理由は単純で、国民健康保険には「扶養」という仕組みがないからです。国保の家庭では、妻の年収がいくらであっても、妻の分の均等割と国民年金保険料はもともと発生しています。守るべき「扶養の枠」が最初から無いので、失うものもありません。むしろ妻が勤め先の社会保険に入れば、妻の分の国保と国民年金がまるごと消えます。
💡 モデル世帯の条件
夫=個人事業主(事業所得400万円・国保)/妻=パート(時給1,200円)/子なし/全員40歳未満/東京都世田谷区・令和8年度の料率(所得割10.58%・均等割67,073円)。社会保険料だけの比較で、所得税・住民税は含みません。
| 週19時間に抑える | 週20時間にする | |
|---|---|---|
| 妻の年収 | 1,185,600円 | 1,248,000円 |
| 妻が入る制度 | 国保+国民年金 | 勤め先の社会保険 |
| 妻の社会保険料 | 293,285円 (国保78,245+国民年金215,040) |
183,331円 (社保177,091+雇用保険6,240) |
| 妻の手取り | 892,315円 | 1,064,669円 |
| 世帯の社会保険料 合計 | 953,104円 | 843,150円 |
週にたった1時間増やすだけで、妻の手取りが年172,354円増え、世帯で払う社会保険料は年109,954円減ります。内訳は、妻が国保から抜けて均等割67,073円と所得割11,172円が消え、さらに国民年金215,040円を払わなくてよくなる一方、増えるのは妻の社会保険料183,331円だけ、という計算です。勤め先が保険料調整制度を使える事業所なら、妻の手取りはさらに増えて1,114,254円(週19時間より年221,939円増)になります。
減るのは負担だけではありません。標準報酬月額104,000円で1年加入すると、厚生年金が年6,840円ずつ終身で上乗せされます(10年なら年68,403円)。国民年金は満額を払っても増えません。加えて、傷病手当金と出産手当金の対象にもなります。
⚠️ 前提が変わると結論も逆になります
この計算は夫が国保の個人事業主である場合のものです。夫が会社員で妻が被扶養者なら、週20時間で社会保険に入ると手取りは減ります。夫がすでに社会保険に切り替えている場合も、妻を被扶養者にできるので同じく減る側です。まず「自分の世帯に扶養の枠があるか」を確認してください。
社会保険が当たり前になる時代、フリーランスが今できる備え
国保のままだと、これからどうなるのかな…
国保の負担は上がり続けてるんだ。2026年度は上限が113万円まで上がった。だから「国保のまま我慢する」か「自分から社保に入る」かを、一度考えておく価値があるよ。
社会保険の適用が広がる一方で、国民健康保険の負担は年々重くなっています。国保の年間上限額は2024年度106万円、2025年度109万円、2026年度113万円と上がり続けています(40歳未満は96万円)。所得が高いフリーランスほど、国保の重さを実感しやすい状況です。
こうした流れの中で、個人事業主が自分から社会保険に入る方法は、法人化して自分の会社で入るか、実際に雇用されて加入要件を満たすかです(法人化で税金と社会保険料はどう変わるか)。
⚠️ 「役員型」も「従業員型」も、実態で判断されます
役員として加入する「役員型」は、2026年3月18日の厚生労働省通達(保保発0318第1号)でリスクが指摘されました。さらに2026年9月14日の通知(保保発0914第2号)で、役員ではない正社員型・従業員型も対象になっています。「従業員型だから安心」とは言えません。判定は①事業所に払う会費等が報酬を上回るか ②業務の実態があるか の2つで、型の名前では決まりません。
社保切替が向く人・向かない人
ただし、誰でも得になるわけじゃない。ここは正直に言っておくね。
「106万円の壁」撤廃のあと、フリーランスが考えること(2026年10月時点)
本業がフリーランスの人に直接の影響は小さい一方、家族の働き方や将来の負担には関わります。
- 配偶者がパートなら:週20時間以上で社保に入るかを比べる(社会保険と国民健康保険どっちが得?)
- 国保のまま下げる:経費と青色申告特別控除で事業所得を正しく下げる、国保の減免・軽減制度を確認
- 法人化:自分の会社で社保に入る(法人化で税金と社会保険料はどう変わるか)
よくある質問(FAQ)
Q1. 106万円の壁が撤廃されると、フリーランスも社保に入らないといけない?
いいえ。撤廃の対象は勤め先に雇用される短時間労働者です。独立して事業を営むフリーランスの本業の所得が、自動的に社会保険の対象になるわけではありません。本業は引き続き国民健康保険・国民年金が基本です。
Q2. 130万円の壁はどうなりますか?
130万円の壁(扶養に入れるかどうかの基準)は、今回の106万円の壁撤廃とは別の論点です。最新の扱いは状況により変わるため、配偶者の扶養に関わる場合は勤務先や年金事務所での確認をおすすめします。
Q3. フリーランスが自分で厚生年金に入る方法はありますか?
法人化して自分の会社で入る方法と、実際に雇用されて加入要件を満たす方法があります。個人事業主のまま会社の従業員として社保に入るサービスは、2026年9月14日の厚労省通知で扱いが厳しくなりました。
Q4. 個人事業主として人を雇っています。いつから社会保険が必要になりますか?
2029年10月以降、従業員5人以上の個人事業所について対象業種が拡大される予定です。ただし既存の事業所は当分のあいだ対象外とされるなど経過措置があり、細部は今後の政令で決まります。最新の厚生労働省の発表を確認してください。
Q5. 社保に切り替えると、今より負担は必ず下がりますか?
必ず下がるわけではありません。今の国保が高い人ほど下がりやすい一方、もともと国保が安い人や75歳以上の人はメリットが小さい、または割高になることもあります。金額は自治体・所得・家族構成で変わるため、シミュレーションで確認しましょう。
Q6. 夫が個人事業主(国保)です。妻が週20時間を超えると損しますか?
いいえ、逆です。国民健康保険には扶養の仕組みが無いため、妻の分の均等割と国民年金保険料はもともと発生しています。妻が勤め先の社会保険に入ると、それがまるごと消えます。世田谷区・令和8年度・40歳未満のモデル(夫の事業所得400万円・妻の時給1,200円)では、週19時間から週20時間にすると妻の手取りが年172,354円増え、世帯の社会保険料は年109,954円減ります。社会保険料だけの比較で、自治体・年齢・家族構成により金額は変わります。
Q7. 勤め先の従業員が50人以下だと、週20時間でも社会保険に入れませんか?
現時点では加入対象外ですが、労使の合意(同意対象者の2分の1以上)で「任意特定適用事業所」になれば加入できます。さらに2026年10月1日から保険料調整制度が始まっており、2026年10月1日以降に任意特定適用事業所になった事業所で、週20時間以上・月収13万円未満(標準報酬月額12.6万円以下)・学生でないという3条件を満たす人は、通算3年間の保険料が軽減されます。軽減分は最終的に事業主の納付額を増やさず、本人の将来の年金額にも影響しません。企業規模要件そのものも2027年10月から段階的に下がり、2035年10月に撤廃される予定です。
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まとめ
2026年10月の「106万円の壁」撤廃は、まず雇われて働くパート・アルバイトに影響する改正です。フリーランスの本業が直接対象になるわけではありませんが、配偶者の働き方や、人を雇う個人事業主の将来、そして社会保険が当たり前になっていくという大きな流れの中で、無関係ではありません。国保の負担が上がり続ける今、国保のまま経費・青色申告で所得を正しく下げるのか、法人化するのか、一度比べてみる価値はあります。
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